2016年07月15日
2006英国紀行 Alfriston&around10&あとがき

バスの窓から。Cradle Hill の辺だと思う。


再びSeaford の青い浜辺。
Seafordへは、次の目的地への移動に備えて、トラベラーズ・チェックを替えに。

夕暮れのBerwick。木立の向こうにちょっぴり見える教会の尖塔。


麦畑を超えて、Berwickまで着いたころにはとっぷり日も沈み。
ふたたび麦畑のなかを村へ戻ります。。


Alfriston River Lane。


朝のAlfriston 裏手。。


滞在していた川べり。


Lullington へんかな。右、Litlington の教会。


再びLitlington のFootpath の斜面の上から。


Litlington のFootpath 入り口あたりの家。

夕暮れのCuckmere River。水の色もおだやかに澄んで。


さいごの日、かな。Wilmington あたりへ足をのばした帰り道だと思う。
メドウを斜めに突っ切るFootpath、いちおうちゃんと地図にも載っているのだけど、この通りやっとかすかに分かるていど。
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あとがき
ここにまとめたイーストサセックスのアルフリストン周辺を含め、英国をさいしょに訪れたのは2004年。けれど、そのときは日程に縛られ、駆け足の滞在で、あちこちに身を引きちぎられるような思いを残してきた。ぜったいにまた来て、こんどはそれぞれの地に腰をすえてじっくり歩き回るのだ、と心に誓った。
それを実現したのが2006年。さいしょのときとほぼ同じ旅程を、ハムステッド・ヒース、ケンブリッジとその周辺、サフロン・ウォールデンとその周辺、そしてこのアルフリストン周辺、さいごにノース・ウェールズと、それぞれ2週間ほどずつかけてまわった。それでようやく、それぞれの土地とじっくり語らい、自分なりにその各々のイデーを汲み上げることができた気がする。
このときの撮影はすべてフィルムカメラ。2004年の旅行のときにアイルランドのゴールウェイで10ユーロくらいで買った、リユーザブルの、おもちゃみたいなコンパクトカメラ、これが意外に軽くて使いやすくて重宝していた。
2004年のさいしょの旅のとき、この地を目的地のひとつに選んだのは、エリナー・ファージョンのAll the Way to Alfriston の一節が頭にあったから。
「私は晴れの日を愛した、私は雨の日を愛した」・・・
彼女はたしか1930年代くらいに、このサウス・ダウンズ、チチェスターからアルフリストンまで巡礼のような徒歩旅行をしている。
当時、作家たちのあいだで(だけではないかもしれない)こうした田舎の徒歩旅行が流行っていたようだ。というか、田舎志向?
アーサー・ランサムも同じ時期に似たようなことをしていたし、ルパート・ブルックやヴァージニア・ウルフなどのブルームズベリ・グループの田舎趣味にも相通じるものがありそう。
それはともかく、それほどまでに美しい場所であるらしいアルフリストンとはいったいどんなところなんだろう、そういう思いがあった。
この村は、正直、けっこう不便。電車では来れない。
ロンドンから、さいしょのときはブライトンまで電車で来て、そこからバスを何本か乗り継いできた。
やっとたどり着いたとき、そのこの世離れした美しさに茫然として、魂を抜かれたようになりながら、メドウの木戸に腰掛けて陽の注ぐ丘々のかなた、青く霞む地平線を眺めていたのを覚えている。
このあたり一帯、サウス・ダウンズ全体が広大なナショナルパークになっている。美しさが損なわれることなく保たれているのはそのことも大きい。
ところで、ハイシーズンに、日程に縛られずに旅行するには、宿の確保が第一だ。
それが身にしみて分かったので、2006年の2度目のときはテントを持っていった。
村はずれの農場でキャンプサイトをやっているのだけど、なぜかこのときは全く離れた川べりに連れていかれて、ここに張れと言われた。仕方なく、ひとりでぽつんと原っぱのはじにテントを張っていた。
火はなし。村の食料品店でそのまま食べられるものを買ってきて食べていた。
夏だったし、手作りのおいしいパイやチーズなど色々あったからとくに問題はなし。
ただ、けっこう雨が降って、ちょっとめんどうだった。
いちど怖かったのは、朝の6時くらいにいきなり どどどーん!!! という爆音で叩き起こされたとき。
何だ何だ、と寝ぼけ眼でテントの外に顔を突き出すと、雷だった。
思えばあらゆる天気を体験したものだ。
2週間ほどいたけれど、やっぱり天気は難しい。
こういう天気の日にここを撮りたい、というのがあるのだけれど、なかなか誂えたようにはいかない。
いちばんさいしょの日のイメージが強くて、あの青く霞んだ丘々の地平線を撮りたいと思う。
けれど、いつもいつも青く霞んでいるわけじゃない。
まず、晴れていないと。天国のようなこの地も、曇りの日はふつうに曇りだ。
そしてとりわけ、ずっと晴れっぱなしでなく、しじゅうさぁっと雨が通り過ぎてはまた日が差す、みたいな天気のときがいちばん美しい。
いわば雨によって、たえず空気が洗い清められている感じ。
しかし、こればかりは、望んでもなかなかね。。
それに、この夏はそれまで一ヶ月ほどの間、ものすごく暑くて焼けつくようだった。
あれだけ暑いとぐったりしてくる。
それは土地の様相も同じで、見てるとやっぱり、暑くて疲れてぐったりしてる感じがした。
それが、写真にも出てしまう。
色とりどりのバラが信じられない美しさだったあの村も、あれ、まだ7月なのになんかバラ枯れてる・・・みたいな。
まぁでも、あれだけ照りつけられたらそりゃ枯れるよな、みたいな。
そんなこんな、色々あったけれど、結果としてはかなり満足な滞在となった。
さいしょのときとは比べ物にならないほど。
この村を基点に心ゆくまで四方八方歩き巡り、あらゆる道、あらゆる景色を親しく知った。
英国の観光パンフの決まり文句にStretch your horizon! というのがあるが、まさにそんな感じ。自分の足で、四方へ地平線を張り広げた。
それでもやっぱり・・・まぁ、写真だけ撮りっぱなしでこうして文章にまとめておかなかったせいもあるのだけれど、10年もたつと大切な記憶もだんだんと色褪せてくるものらしい。
アルバムをめくればだいたいのところは思い出せても、この家、どの村の家だっけ・・・この道はどこの道だっけな?みたいなのもちらほら。
いまパリに住んでいて、サセックス、遠くないな、わりとすぐ行けるな、あの村の6月のバラをもういちど見たいな・・・と、去年からずっと思っていた。
今年、その思いをやっと叶えて、また行ってくることができた。
そこでひきつづき、2016年夏のこの土地のもようをお届けしようと思います。。