2017年12月31日
パリのお部屋の個人的イストワール(3)
北向きの部屋は、冬はちょっぴりしか日が差しません。というか、そもそもあんまり日が出ない。
いつもどんより、曇り空。
けれど暑がりの私は、エアコンのないパリの夏に耐えられず、わざわざ北向きの部屋を選んだのです。

さて、お部屋めぐり、つづきます。キッチンスペースのとなりにはドゥーシュ(シャワー)。
お約束で水漏れするシャワーヘッドはボウルの中に。
シャワーカーテンはどうしてもカビがちなので、時々ジャヴェルに漬けて漂白します。
このシャワーまわりも、さいごまで残った難関のひとつ。
壁との細い隙間には死ぬほどホコリが溜まっていて、のぞきこむと見えるのだが手が届きません。
どうしたものか、ずっと悶々と・・・。
で、さいきんやっと発明したのが、棒の先にぞうきんをくくりつけ、遠隔操作で掃除する方法。
慣れるとこまかいところまでけっこうキレイになります。
土台の継ぎ目の部分など、長年の汚れが真っ黒にこびりついて、タワシでもクレンザーでもびくともしない。
そういうところは上から白ペンキを塗って強制終了。
これでようやくスッキリ!!

ドゥーシュのとなり、ドアのわきにはアコーディオン型のショファージュ(中央暖房)。
冬にはありがたい存在ですが、これまたホコリの溜まりやすさ、掃除のしにくさはウルトラ級。
スポンジにクリームクレンザーをつけ、奥のほうの届かないところは割り箸を使って遠隔操作で。
しかし、手ごわいのがこのパイプ。

あるとき、夜寝ていて強烈なホコリ臭を感じ、何だろうと調べてみたら、このパイプの裏側が上のほうまで、熱で表面のペンキがベリベリにめくれたところにホコリがいっぱい溜まっているのを発見。
それを掃除するため、台をひっぱってきて、そこを足場に、ドアの取っ手やカギ部分に足をかけ、ロッククライミングのように壁をよじ登るはめに・・・。

ここのスペースには、実はいまは自転車を置いています。
ほかに場所がないので、たてにしてこんな具合に。
前は学校まで自転車で通っていたので、毎日使っていました。ただ、じゃま・・・。
いまはメトロになったので、手放そうかと思案中。
さて、これにてぐるっと一周です。
思えばこの部屋を見つけるまで、理想の住まいの条件をこまごま書き連ねたリストを片手にずいぶん探しまわったものです。
築百年くらいの昔ながらのアパルトマンで、螺旋階段に赤いタピの昔ながらの造りで、狭い女中部屋でいいから素敵なフランス窓があって、白壁に木の床で・・・。
あちこちで「そんな部屋はない」「そんな部屋はありません」とにべもなく言われつつも、いや、ないはずがない! と諦めなかった。
結果、今のこの部屋は、リストの条件の8割以上、ほぼ叶っています。
おかげさまで大家さんもいい方で、家賃もそこそこリーズナブル。
念ずれば叶う!!ということの証として、そしてもちろんこれまで手をかけたさまざまな仕事の結果として、今日も私の暮らしを支えてくれています。
こちらに住んで以来、思いのほか時間もエネルギーも学業に取られ、なかなか創造的な仕事に注ぐ余裕のない毎日。
そんななか、この部屋はいまの暮らしの中で生み出せる数少ない作品のひとつなのかも。

2017年12月31日
パリのお部屋の個人的イストワール(2)
お部屋めぐり、つづきます。

観音開きのフランス窓。なかなか素敵で気に入ってます。
ただ、通りに面してるのでうるさいし、しょっちゅう車が通って空気があまりよくないのが難点。

窓の右手には、コックピットのようなキッチンスペース。
部屋の狭さに比してでかすぎるのが不満でしたが、だいぶ使いやすく整ってきた。
ここも色々塗り替えたのです。水色だった外枠のパーテーションみたいなやつ、鏡の額はピンクだったし、スツールは紺だったし、配管も・・・。
古いアパルトマンはたいがいあとから水道をつけているので、配管がむき出し。
色はばらばら、結露はするわ、ホコリはつもるわでいやな感じ。
タイルの継ぎ目も前はカビで真っ黒で、苦労しました。


左、ビジュー類を置いたちょっとお気に入りのスペース。
キャビネットには日用品類を。


備え付けのコンロが壊れたので、前の住まいで使ってた簡易コンロで料理してます。
小さな冷蔵庫、この日の中身はこんな感じ。
外食はめったにせず、基本、家でつくります。

流し台の下。実は、掃除的にはこの向こう側がラスボス的最難関!!
この棚をつくった人、使い勝手を考えてくれたのはよく分かりますが、掃除するときのことを全く考えてない!!
ここの下や奥を掃除したくても、届かないどころかそもそも「見る」ことさえできないのだ。
今まで誰も掃除してないから相当なことになってるだろうなと思いつつも、どうにもならないので諦めていたのです。
ところがある日、夜中になんといきなりネズミが侵入してきたことがあって。
今から思えば、奴も「こりゃ寒くてたまらん」と必死だったのでしょうね。
しかし、そのときは不意のことに凍りついてしまい。
何とか出て行ってもらおうと色々試みるも、ここの奥のスペースに逃げ込まれてしまった。。
「よりによって、住人の私が唯一アクセスできないそこかよ!」と頭にきて、怒った勢いでドライバーでこの棚をばらばらに解体し、結果ついに掃除可能に。
50年分くらいの汚れとホコリが溜まり、それはすさまじいことになっていた。
ガーッとキレイにして、ジャヴェルで徹底的に磨き上げて仕上げ。スッキリー!!
これにてさいごの砦陥落!! ナポレオンもかつてこれほどの勝利を味わったことはあるまい。
実はここの攻略を祝して、ちょっと部屋の記念写真を撮ろうかなと思い立ったのでした。

(3)につづきます。
2017年12月31日
パリのお部屋の個人的イストワール(1)
ちょっと思い立って、現在、2年半ほど住んでいるこちらの部屋のようすを記録にまとめてみようと思います。
引っ越してきた日、残された大量のガラクタを運び出し、大掃除から始まったここでの暮らし。
思えばほんとに、日々これ掃除とペンキ塗りと、あらゆるトラブルとの戦い。
さいしょはほんとに汚かったのです。いや汚れてるだけなら掃除すればいいのだけど、問題はアクセスしづらさ。
狭くて奥まっていて物理的に手が届かないとか。方法論から編み出さなければならないのでほんとにたいへん。
まさかこんなところで創造性を要求されるとは。
くわえてもともと家具つきの部屋で、自分でどうこうできる余地があまりないので、その中でいかに居心地よく整えるか工夫のしどころなのです。
パリ14区。古いアパルトマンの2階、北向き、9㎡の中にベッド、キッチン、シャワーまで全部つめこんだ極小部屋。
人が生きていくうえでのまさに最小単位という感じ。

入り口のドアです。ここからぐるっと時計回りにいきます。
カギが2つついてるのだけど、下のカギのたてつけが悪く、つねに油差してないと回りません。
なので玄関わきにグリースの缶を常備。

メザニンベッドの下の、いつもいるスペース。ここで色々やってます。
今日は写真とるためにちょっときれいにしたので、ちょっとネコかぶってる感じw
ふだんはこれより多少散らかっています。
机代わりの台の中には書類や本類、ボストンバッグなどを収納。
左手はアルモワール(衣装だんす)。越してきたときは、ここの裏を掃除するところから始まった。
裏には大量の埃とクモの巣が。

頭上のベッドを下から見たところ。もとはナチュラルウッドの木目調だったのをペイント。
とにかくでかくて圧迫感があって、見た瞬間「これは白く塗らなきゃ!」って。
面積的にはいちばん大きくて大変でした。二度塗りしたし。
ここをはじめとして、白ペンキをいったい何缶消費したか。
郊外の大型店まで買いに行くので、もって帰るのがいつもたいへん。

たんすの中。この小ささありえない!って、私もさいしょは思いましたよ。
こちらでは服はモノトーンにおさえ、彩りはスカーフで添える方向にシフト。
きれいな色が好きなので、つくばの家のワードローブには虹の七色が揃っているのですけど。。

窓側の壁。ここは一時期カビで真っ黒になって大変だったのです。
掃除して上からまたペンキ。微妙にこまかい凹凸があって、完璧に塗りこめるまで何度も重ね塗り。
カビってほんとに根深いのです。いやはや疲れました。
はしごにも白ペンキ。乾くまでベッドに上がれないので、その日は床の上で椅子を3つ並べて寝たっけ。
私、ペンキ職人になれるんじゃないだろうか。
窓辺には街じゅう探し回って、お店に展示用で残っていたさいごの一台を売ってもらった白のエレピ。
人が生きていくには、水と空気と音楽が必要です。

壁につくりつけの棚ももとはナチュラルウッドで、古びて暗い色になっていたのを二度塗り。
棚板は表裏あるので、乾かしておくスペースの問題など色々たいへんでした。
近所の雑貨屋さんでぴったり入るケースを探してきて、ここには季節でない服や靴類など入れています。
ちょっと高すぎて、出し入れがたいへん。

はしごを登って、メザニンベッドの上。ここだけはまるでホテル仕様w 広くてゆったり。
ランプも白く塗った。
(2)につづきます。