2012年03月04日
撮影のためのイメージ
少し前、私を撮りたいと言ってくれた人があった。
漠然とした話をしたさい、じゃあ私の方でも、こんなふうに撮ってみたらというイメージを送ります、と言ったきり、あれこれにかまけて先延ばしにしていた。
先方がたもいろいろ大変そうで、実現するかどうか分からないけれど、いちおう少しまとめてみようと思う。
ここ数年の私のイメージって。
「妖精ってものがほんとにいるとしたら、あなたみたいなんじゃないかと思う」
「過去をさかのぼった感じ」・・・
人に言われた言葉だ。
それはたぶん、そのころ自分の劇団で、古代アイルランドを舞台に水の精の出てくる物語を演じていたイメージが大きいのだと思うけど。
そんな感じでやってみたらいいかもしれない。
妖精とか妖怪とか、そういうものに昔から惹かれる。
半ば人間でないもの、的な。
たとえば耳のとがった、長い金色の髪の妖精。
あるいは銀色の髪の。・・・
銀色のほうがもっといいかもしれない。
そのほうが非日常的だから。
その傍らには一頭の真っ白な馬が、たとえば長い角をもったユニコーンがいる。
あるいはペガサスが。
ペガサスのほうがもっといいかもしれない。
長い翼をもった真っ白な馬。
翼というモチーフに、私はいつでも惹かれるのだった。
自由だとか、飛翔だとか、雲海を突きぬけてかなたへ広がる大空だとか、そしてまた自由だとかを想起させるこのモチーフに。・・・
それは精神の自由であったり、別の世界と行き来できる自由であったり。
そして、力強さだとか。可能性だとか。生きる喜びだとか。・・・
月というモチーフに惹かれる。
銀色の満月でもいいし、銀色の三日月でも。・・・
竜という生きものに惹かれる。
それが架空の生きものであるところに。・・・
ただのポートレイトではなく、物語の一場面のような。
想像力をかきたてる写真がいい。・・・
ラファエル前派の絵に出てくる女性たちのような。・・・
たとえばジョン・エヴァレット・ミレーの<オフィーリア>。
ずっと長いこと、私はそれが世界でいちばん美しい絵だと思っていて、「こわい」とか「ぞっとする」とかいう人たちの気が知れなかった。
でも、よく考えたらたしかにそれは、(世界でいちばんいちばん美しいことに変わりはないとしても)溺死体の絵なのだ。
あるいは、ウォーターハウスの<シャーロット姫>。
長らくそれを、ポール・ウェラーの<スタンリー・ロード>の中に印刷されている絵として知っていた。
これもラファエロ前派だと知ったのはだいぶあとになってからだ。
ポールはこの絵にインスパイアされてWinds of Speed を書いた。
シャーロット姫はアーサー王の伝説に出てくる女性で、テニスンが詩に書き、ウォーターハウスが絵に描いた。
焦点のはっきりしない、狂女の虚ろなまなざし。
私はいつも、上村松園の<花がたみ>という絵を思い出す。
そして、ロセッティの絵に出てくる女たち・・・ジェイン・モリスのヴァリエーション。
<プロセルピナ>がたぶんいちばん有名だけど。
強いまなざしの大きな目と、きかん気で言いだしたことはきかない強い唇の女たち。
一度見たら忘れられない顔だ。・・・
古代劇やオペラの舞台に出てくる女たち。
トリスタンとイゾルデだとか。
広がって長く垂れた袖だとか、後ろへひきずった長い裾だとか。・・・
たとえば<ロード・オヴ・ザ・リング>に出てくるガラドリエル。
映画ではケイト・ブランシェットという女優が演じていた。
映画全体のなかで、誰よりあの人が私にはいちばん印象的だ。
妙にくせのある微笑み、二コリというよりはニヤリといったような。
ものすごく美しいのだけれど、若いのか年取ってるのかよく分からなくて、でも少なくとも千年くらいは生きていそう。
ものすごい力を持っているのだけれど、善の側なのか、悪の側なのかよく分からなくて、結局ほんとはそんなもの超越している、みたいな。
悪は悪いからだめというんじゃなくて、めんどくさくてみんなの自由と独立をおびやかすからだめ、みたいな。
青い夜明け、白鳥の首をもたげたかたちの舟に乗ってしずかに川のおもてをやってくる、その幻想的な姿はほんとに一幅の絵。
川とか湖とか海辺とか、水のモチーフ。
たとえば、人魚。
現代に生きる女性で、妖精的な人といったら。
たとえば、エンヤ。
むしろ彼女の音楽よりも、そのファッションセンスとか色彩感覚が好き。
白とか赤とか瞳を打つようなはっきりした色を印象的に着こなす。
And Winter Came のアルバムジャケットはほんとに印象的だ。
真っ白な雪景色のなかで、真っ白な馬と、真っ白な長いドレスを着た彼女がたたずむ。
物語のなかに生きている人のように。
たとえば、卑弥呼。
真っ赤な衣の裾をひきずってしずかに歩いていく。・・・
漠然とした話をしたさい、じゃあ私の方でも、こんなふうに撮ってみたらというイメージを送ります、と言ったきり、あれこれにかまけて先延ばしにしていた。
先方がたもいろいろ大変そうで、実現するかどうか分からないけれど、いちおう少しまとめてみようと思う。
ここ数年の私のイメージって。
「妖精ってものがほんとにいるとしたら、あなたみたいなんじゃないかと思う」
「過去をさかのぼった感じ」・・・
人に言われた言葉だ。
それはたぶん、そのころ自分の劇団で、古代アイルランドを舞台に水の精の出てくる物語を演じていたイメージが大きいのだと思うけど。
そんな感じでやってみたらいいかもしれない。
妖精とか妖怪とか、そういうものに昔から惹かれる。
半ば人間でないもの、的な。
たとえば耳のとがった、長い金色の髪の妖精。
あるいは銀色の髪の。・・・
銀色のほうがもっといいかもしれない。
そのほうが非日常的だから。
その傍らには一頭の真っ白な馬が、たとえば長い角をもったユニコーンがいる。
あるいはペガサスが。
ペガサスのほうがもっといいかもしれない。
長い翼をもった真っ白な馬。
翼というモチーフに、私はいつでも惹かれるのだった。
自由だとか、飛翔だとか、雲海を突きぬけてかなたへ広がる大空だとか、そしてまた自由だとかを想起させるこのモチーフに。・・・
それは精神の自由であったり、別の世界と行き来できる自由であったり。
そして、力強さだとか。可能性だとか。生きる喜びだとか。・・・
月というモチーフに惹かれる。
銀色の満月でもいいし、銀色の三日月でも。・・・
竜という生きものに惹かれる。
それが架空の生きものであるところに。・・・
ただのポートレイトではなく、物語の一場面のような。
想像力をかきたてる写真がいい。・・・
ラファエル前派の絵に出てくる女性たちのような。・・・
たとえばジョン・エヴァレット・ミレーの<オフィーリア>。
ずっと長いこと、私はそれが世界でいちばん美しい絵だと思っていて、「こわい」とか「ぞっとする」とかいう人たちの気が知れなかった。
でも、よく考えたらたしかにそれは、(世界でいちばんいちばん美しいことに変わりはないとしても)溺死体の絵なのだ。
あるいは、ウォーターハウスの<シャーロット姫>。
長らくそれを、ポール・ウェラーの<スタンリー・ロード>の中に印刷されている絵として知っていた。
これもラファエロ前派だと知ったのはだいぶあとになってからだ。
ポールはこの絵にインスパイアされてWinds of Speed を書いた。
シャーロット姫はアーサー王の伝説に出てくる女性で、テニスンが詩に書き、ウォーターハウスが絵に描いた。
焦点のはっきりしない、狂女の虚ろなまなざし。
私はいつも、上村松園の<花がたみ>という絵を思い出す。
そして、ロセッティの絵に出てくる女たち・・・ジェイン・モリスのヴァリエーション。
<プロセルピナ>がたぶんいちばん有名だけど。
強いまなざしの大きな目と、きかん気で言いだしたことはきかない強い唇の女たち。
一度見たら忘れられない顔だ。・・・
古代劇やオペラの舞台に出てくる女たち。
トリスタンとイゾルデだとか。
広がって長く垂れた袖だとか、後ろへひきずった長い裾だとか。・・・
たとえば<ロード・オヴ・ザ・リング>に出てくるガラドリエル。
映画ではケイト・ブランシェットという女優が演じていた。
映画全体のなかで、誰よりあの人が私にはいちばん印象的だ。
妙にくせのある微笑み、二コリというよりはニヤリといったような。
ものすごく美しいのだけれど、若いのか年取ってるのかよく分からなくて、でも少なくとも千年くらいは生きていそう。
ものすごい力を持っているのだけれど、善の側なのか、悪の側なのかよく分からなくて、結局ほんとはそんなもの超越している、みたいな。
悪は悪いからだめというんじゃなくて、めんどくさくてみんなの自由と独立をおびやかすからだめ、みたいな。
青い夜明け、白鳥の首をもたげたかたちの舟に乗ってしずかに川のおもてをやってくる、その幻想的な姿はほんとに一幅の絵。
川とか湖とか海辺とか、水のモチーフ。
たとえば、人魚。
現代に生きる女性で、妖精的な人といったら。
たとえば、エンヤ。
むしろ彼女の音楽よりも、そのファッションセンスとか色彩感覚が好き。
白とか赤とか瞳を打つようなはっきりした色を印象的に着こなす。
And Winter Came のアルバムジャケットはほんとに印象的だ。
真っ白な雪景色のなかで、真っ白な馬と、真っ白な長いドレスを着た彼女がたたずむ。
物語のなかに生きている人のように。
たとえば、卑弥呼。
真っ赤な衣の裾をひきずってしずかに歩いていく。・・・