2020年10月04日

オペラ地区に通った夏

オペラ地区に通った夏

オペラ・ガルニエ、メトロから上がるとまず目に入る。
この記事では、日本人街のあるオペラ地区に通った夏の日々の画像を。
それから後半で、このカルティエに通った理由や、この地区への複雑な思いについてまとめようと思います。

オペラ地区に通った夏

こちらに住んでさいしょに通った語学学校がこの地区にあったので、かつては毎日見ていた景色。

オペラ地区に通った夏

大通り沿いのピエール・エルメのアイスクリーム・スタンド。
マカロンにあまり興味のない私にとってのここは<おいしいアイスクリーム屋さん>。

オペラ地区に通った夏

この夏はよくお世話になった、日系の古本屋さん。

オペラ地区に通った夏

パサージュ・ショワズル。

オペラ地区に通った夏 オペラ地区に通った夏

ぶらりと歩くにはいい、なかなか美しいところ。

オペラ地区に通った夏

おいしいアイスクリームのお店もありました。不定期だけど。。

オペラ地区に通った夏 オペラ地区に通った夏

裏手にはひっそりと、絵になるホテルなども。。

オペラ地区に通った夏

パレ・ロワイヤルもほど近い。

オペラ地区に通った夏 オペラ地区に通った夏

オペラからしばらく歩いて、チュイルリー公園でのひととき。。

オペラ地区に通った夏

花盛りの花壇が絵のよう。

オペラ地区に通った夏 オペラ地区に通った夏

大通りからちょっと入ったパティスリーの、美しい宝石のようなウィンドウ。

オペラ地区に通った夏

パサージュ・デ・ジャコバン周辺のカフェ。
テラス席の人々が楽しそう。。

オペラ地区に通った夏

ルーヴル・リヴォリの<アンジェリーナ>に行った日。。

オペラ地区に通った夏 オペラ地区に通った夏 オペラ地区に通った夏

並びのガラス屋さんの、ラリックの色ガラスも美しく。。

オペラ地区に通った夏

カットグラスの動物たちもつい眺め入ってしまうモチーフ。

オペラ地区に通った夏 

サントノーレ通りを横切って…

オペラ地区に通った夏

何げないけど味わいのある街並。

オペラ地区に通った夏 オペラ地区に通った夏

再びパサージュ・デ・ジャコバン周辺。

オペラ地区に通った夏 オペラ地区に通った夏

カフェに集う人々を眺めるのはいつでも心楽しい。

オペラ地区に通った夏

いつもの古本屋さんで読みふけったあと、私も角のカフェでひと休み。。

   ***

この夏は、日本人街のあるオペラ地区に、足しげく何度も通った。
ふだんはほんとに、めったに行かないのだけど。
いつもなら日本に帰ってるはずのこの時期に帰れないから、パリではここが、いちばん日本に近い場所なのだ。

これまでは、そこまで日本に対する渇望って、なかった。
和書を気軽に読めないのは寂しかったけれど。
和食は日本に帰ったときに食べればいいと思っていたし、こちらでわざわざ和食のお店を探したり、自分で作ったりっていうの、あまりなかった。
そういう人たち見ていて、むしろ不思議に思っていた。
そんなに和食を食べたいのなら、日本にいれば? 
何でヨーロッパに住んでいるんだろう? って思っていた。

でも、こちらに住んで6度目の夏にして、はじめて知った。
帰らないっていうことと、帰りたいのに帰れないっていうことは、まったく違うのだ、ほんとうに。
これまで、夏になったら日本に帰る!っていうことだけを希望に、いろいろ大変な状況を耐えてきたのに。
それが帰れないってことになって、あまりにショックで、信じられなくて、怒りに気が狂いそうだった。

何とか生き延びるために、この怒りとショックを自力でリカバーするにはどうしたらいいだろう?
って、いろいろ必死で考えて。
こちらにいてもなるだけ日本にいるような気分で過ごせるように、工夫してみるしかなかった。
「日本に帰ったらやりたいことリスト」を眺め返して、そのなかでひとつひとつ、こちらにいてもやれることはないか、やれる方法はないかって考えて。

そんななかで、それまであまり寄りつかなかったオペラ地区の日本人街にも通い詰めるようになった。
そして、日本書をおいている書店に入り浸ったり、日本食を買い込んだり、こちらで手に入る限りの材料で、家で和食をつくってみたり。
日本書も、日本食も、こちらでは日本の3倍くらいする。
安いお店を探しても2倍ではきかないかな。
なので、いつもはまず買わない。
日本食レストランに入るってことは、なおさらない。

でも、この夏はいろいろ買った。
日本食レストランにも入った。2,3回だけど。
(そのうち2回が、天丼を食べたときw)
それくらいはしないと、ほんと、人間としての均衡が危なかった。

そもそも、どこのお店に何が置いてあって、どことどこを比べて何がどれくらい安いかとか、そんなことも知らない。
なので、市場調査から始めたんです。
ふだん疎いことって、すごい、時間と手間がかかる。

いちばん品揃えが豊富かなと思ったのは、<京子食品>かな。
けっこうマニアックないろいろな調味料や乾物や、食品だけでなく、和食の食器なども各種おいていて、なんと日本式の炊飯器まであるのにはびっくり。
「ここで買い揃えたら、ふつうに<日本人の生活>ができるなー」って、思った。
ただ… 前の記事でも書いたように、ドミグラスソースと赤エンドウ豆だけは、どこを探しても今のところ見つかりませんが…。

あと、そこのお店は、週末に行ったせいもあるかもしれないけど、とにかくものすごい人で。
店内は混雑してるし、レジは死ぬほど並んでるので、結局息が詰まって逃げ出してしまい、そこでは買いませんでした。
ほかの2店舗くらいで買っていた。

オペラ地区に通った夏

これがいちばん大量に買ったときかな。
ええ、それでもこんなものです。
自分なりにいろいろ比較検討して、ほしいものリストと照らして、厳選して、こんな感じ。
この日は、しょうゆ、白みそ、緑茶のパック、しそ梅干し、おろし生姜のチューブ、寒天、アーモンドと黒豆のかき餅、黒豆大福、黒ごまアイス。

これ全部で30ユーロほど。
この中でいちばん高いのはしょうゆで、7ユーロほど。
日本に帰ったときも使ってるお気に入りです。
日本だと300円弱なので、やはり2倍以上はしてる。
万事がそんな調子です。

でも、これだけ買うとけっこう、気が済んだ。
このうちリピ買いしたものもいくつかあるけれど、何度か通ううち、しぜんと買う量も減ってきて。
だんだん気も済んで落ち着いてきて、しぜんと足も向かなくなった。
満足してきたんですね。
タンクが空っぽで激しい欠乏に苦しんでいたのが、満たされてきた感じ。

「気が済んだ」って、言ってしまうと、つまりはちょっぴり「飽きた」ってこと。
じっさい日本に帰れていたころも、そうだったな。
気が済むまで、本屋や、ショッピングモールや、お気に入りのカフェやレストランに何度もしつこく通い詰めて、何度も何度も。
タンクに記憶をいっぱいチャージする感じで。
だって、いるあいだに通っておかないと、それからまた一年、なしですごさないといけないんだもの。
それで、「よし、だいたいチャージできた! これだけいっぱい通ったから、あと一年は大丈夫!」みたいになるまで。
思えばそれが毎年の夏のミッションだった気も。

日本での品ぞろえの豊富さ、リーズナブルさに比べると、こっちはほんと、食にしても服にしても本にしても、ほかの色んなものにしても、なにかと不自由で手足をもがれた感じ。
値段も高いし、質も悪いし、サービスも悪いし、いろいろ不愉快な目に遭ったりもする。
でも、その制限の中でなんとかやるしかない。

日本書をおいてる店にしても、古本屋が一軒と新刊屋が一軒。
古本屋は気がめいってくるほど古い本ばかり。
新刊屋は日本の3倍する。
悲しくなるばかりの文化環境。。
ずっとアナログ派だった私も、この夏は仕方なく、ついに電子書籍デビューしましたよ。

それでも、それでも。
これらのお店の店員さんたちはいずれも、いつも感じがよいし。
品揃えは悪くとも、たまには掘り出し物もあったりするし。
古本屋さんでは、日本の古本屋並みの手頃さ。
日本に帰ったとき、いつも本屋でするように。
手にした本に引き込まれ、頭がふらふらになるまで没頭して、読んだ内容から喚起された色んな考えでいっぱいになって店を出ると、ふと、いま私けっこう幸せかも、ってなったりする。
こっちにいても、こういうことができるんだ、っていう。

いつも日本に帰ったとき食べる、お気に入りのアイスクリームには出会えなくても、また別のあらたなお気に入りに出会えたり。
とくに日本とは関係のない、何げない街角の趣あるたたずまいや、公園の美しい景色に癒されたり。。

そういう小さな幸せ、小さな満足をコツコツと積み上げてゆくことで、怒りとショックと欠乏の底なしの裂け目も、ちょっとずつ埋め合わされていった。
ぜんぶはとても、埋め合わせなどできない、もちろん。
それでもリストの項目を、あの手この手でひとつずつ潰してゆくうち、ちょっとずつ気は済んでゆき、夏は過ぎていった。

ふり返って、あ、夏、終わったんだ、と思って。
日本へ帰れなくても、夏は終わるんだな。
それでも人生はつづいていく。。


























同じカテゴリー(巴里日記2020夏)の記事画像
スマホ画像2020年8月・9月
スマホ画像2018~2020年7月
日本に帰るということ
パリで天丼を探す
パリでモンブランを探す
パリの家ごはん(4)和スイーツづくり
同じカテゴリー(巴里日記2020夏)の記事
 スマホ画像2020年8月・9月 (2020-10-28 22:29)
 スマホ画像2018~2020年7月 (2020-10-27 19:39)
 日本に帰るということ (2020-10-06 09:27)
 パリで天丼を探す (2020-09-29 04:39)
 パリでモンブランを探す (2020-09-28 00:26)
 パリの家ごはん(4)和スイーツづくり (2020-09-27 22:08)
Posted by 中島迂生 at 05:32│Comments(0)巴里日記2020夏
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。