2016年11月13日

お湯が出ません。~フランス人のデモ体質とは~




底冷えのする土曜日、用事があってオペラ地区へ行ってきました。
灰色の曇り空、寒~っ!!
こちらではすでに初雪が降りました。
今年の冬は厳冬みたい。。

ちょうど十日ほど前でしょうか、サル・ガヴォーへ行った日ね。
午後から急にど~んと冷え込んだのです。
何だ何だこの寒さは・・・という感じで、それまでトレンチだったのが、
夜からダウンに着替えていきました。

しかも、その日からいきなり、暖房がつきません。
我が家は、中央暖房という、パイプがアパルトマンの各部屋を通って全体をあっためる
システム。各部屋で栓をひねって調節します。。
それが急にしーんと冷たいまま。

しかもしかも、その日からいきなり、お湯が出ません。
管理人がいないので聞く人もおらず、何がどうなってるのかさっぱり。

でも、こんなことにはもう慣れてる。
こっちに暮らしていると、困ったことって大抵三つくらい重なって起こるんです。
こんなのまだ全然いいほうだわ。。

とくに慌てることもなく、ケトルでお湯を沸かして大き目のボウルに注ぎ、
髪も洗って、湯浴みも済ませました。
幸い水も出るし、電気も使える。問題なし!

以前、自転車にテントと長靴を積んでアイルランドの荒野を旅していたときは、
その日の宿の保証もなかった。
とりあえず屋根があるだけでありがたいし、そのうえ水も電気もあるって、
ほんと、至れり尽くせり!

イニシュ・ボフィンという離島では、基本、夜間しか電気が通ってなかったし、
一日通らないこともあった。
そんなときにはやかんの水をガスで沸かして髪洗ったものです。
キャンプ経験あってよかったな。。

さて、暖房のほうは一日二日で回復しましたが、お湯、なかなか出ません。
そのうち出るだろ、と思ってあまり気にせずにいたが、いつまでもケトルにボウルで・・・
というのもだんだん面倒くさくなってきた。
南仏の大家さんに連絡すべきかしらこれ??・・・

と思っていたら、とうとうある日、アパルトマンの玄関のところに、
怒りの大書が出現。



一週間前からお湯は出ないし、玄関ホールの電球は切れたままだ!
こんなんは断じて許せん!!
住人のみんな、俺たちの権利を主張しようぜ!!!

みたいな。(たぶん)。。
って、そこまでカンカンにならなくてもw・・・さすがデモ好きフランス人、
日本人の諦め体質とは好対照。。

こっちではみんな、事あるごとにとにかく自分の権利を主張する。
労働者たちが自分たちの権利を主張しまくったおかげで、
彼らの待遇はずいぶん手厚く法律で守られるようになった。
他方、それで企業が及び腰になって、容易なことでは正式雇用しなくなってしまった。
万事そんな感じ。結局いいのか悪いのか・・・。

あちこちの大通りでしょっちゅうデモやってるし、
さいきんではお巡りさんたちまでデモやってます。(おいっ!)
真面目な主張がある一方で、ただ混乱に乗じて騒ぎたいだけの奴らもいて、
関係ない店のショウウィンドウ叩き壊して回ったり。

そんな彼らのことだから、トランプ勝利のときもデモ起こすのでは、と思ったけど、
今のところ、ひたすら打ちのめされてしまっているみたい。
去年のテロの一周忌も重なり、パリはいま、お葬式のような悲しみに沈んでます。。

ちなみに、お湯はさいきんようやく復活しました。おかげさまで。
やっぱりあったかいシャワー使えるって素晴らしい。。






  

Posted by 中島迂生 at 06:43Comments(0)巴里日記2016-11月

2016年11月12日

地元民のお気に入り。秋草に染まる散歩道




ここのカルティエに移り住んだのは去年の5月くらいですが、
この小さな路地は今年の夏になってはじめて見つけました。

自転車を修理に持っていったら、一時間後に取りに来てくださいと言われ、
いったん帰るのもめんどうだしどうしようかな・・・と思いながら
ぶらぶら歩いていたら、突然、この絵のような素敵な景色が目の前に。



日本にもこんな道、ありますよね。
高田馬場の裏手の一角とか、裏原宿とか、横浜の商店街のひっそりとした裏通りとか。
住人たちが手をかけて、毎日愛情こめて育てている感じの。。

みんなこの道が好きみたいで、こぞって通る。
お店が軒並みシャッターを下ろした日曜の午後でも人通りが絶えません。
うん、ここは遠回りしてでも通りたくなるよね。。

 

壁一面を覆いつくしたツタの葉むらは芸術的な秋の色。
見とれていると、道の向こうからすてきな老夫婦が現れました。
うーん、絵になるね。まるで映画のワンシーン。

 

手をつないでお散歩中の年配カップル、わりとよく見ます。
微笑ましく思う一方、いったいどうやったらあんなに何十年も
仲良くいっしょにいられるのかしら、と真面目にふしぎに思ったり。。

小道沿いの細長い公園。ちょっと冷たいけれどベンチに腰を下ろし、
短い秋の日を惜しみつつサガンを読む午後のひととき。

 





  

Posted by 中島迂生 at 08:13Comments(0)巴里日記2016-11月

2016年11月10日

コンサートのあとで♪




サル・ガヴォーでのコンサートの夕べ。
終わったあと、この日招いてくださった、デザイナーのマダムが、
カフェで昔の色んな話を聞かせてくださいました。
マダムのお話はいつも面白くて、聞くのが楽しみ。
満入りのカフェのガヤガヤ喧しいテーブルで、一心に耳をすませていました。

マダムのお知り合いだった、アメリカのものすごい大富豪のお話。
コネティカットの一等地にとてつもない敷地とお屋敷をもっていて、
その広さたるやパリ市全域ほどもあったとか。
「飛行機で上から見ると、コネティカットでいちばん広いの。」
お隣がケネディ家だったこと・・・。
「隣りといっても、車で何時間もかかるのよ。」

この大富豪にマダムが気に入られて、ぜひ遊びに来なさいと再三言われたこと。
「アメリカは好きじゃないからずっと渋っていたのよ。
それでもついに腰を上げて、スーツケースも買って、飛行機も予約して・・・」
行くばかりになったとき、この方が大理石の階段から落ちて亡くなった、
という知らせが来たこと。
「映画みたい!」
「あら、映画にもなったのよ。カトリーヌ・ドヌーヴが主演して・・・
何といったかしら、70年代くらいのことよ」

遺言でたくさんのお金を残してくれたけれど、あとが大変なので
受け取らなかったお話。
「あなたにはお世話になったからってね・・・。
私としてはとくにお世話したというつもりはなかったのだけれど、
心を尽くして人に接していると、誰か見ていてくれるものなのね」

貴族社会の色々な話・・・服と同じで、最新シーズンの宝石しか
身に着けないという話。
ワンシーズン前の宝石なんか見向きもしないそう。
「それでも、パリのアパルトマンがいくつも買えるくらいの
価値があるのよ。」

「そしてね、貴族は必ず、本物とイミテーションと、両方作らせるのよ」
イミテーションは、旅行用に、だそう。ふつうの人には見分けがつかない。
「でもね、貴族の中にも、落ちぶれ貴族がいるのよ。
彼らは目利きだから、本物が分かるの。
ホテルの部屋なんか、みんな本物も偽物もごちゃごちゃに置いているでしょう。
すると、彼ら本物だけ盗って持っていくの。
だから、貴族たちの集まりには、落ちぶれ貴族は呼ばないのよ」

ほかにも色々、皇室のお話、パリの日本人社会のお話・・・。
「でも私はまだ、パリには40年くらいしか住んでないのよ」
40年くらい「しか」って!・・・全くもって、歴史の厚みが違います。
興味深いお話は尽きず、
カフェの煌めきと喧騒の中に夜は更けていくのでした。。。

 






  

Posted by 中島迂生 at 06:14Comments(0)巴里日記2016-11月