2020年03月20日

小説・アレクサンドルⅢ世橋 7. エマニュエルを探して

小説・アレクサンドルⅢ世橋 7. エマニュエルを探して


すべてを失ったいま、ぽっかりと虚ろなシルヴィーの心にしきりと思い出されてくるのはどういうわけか、はるか昔、幼いころ、寝物語に聞かされたおとぎ話の数々だ。とりわけこの、<12人の兄弟>として知られる、少しばかり奇妙な印象を残す物語…

愛する者を失った少女は、彼らを見つけるまでは戻らない、と誓いを立てて、広い世界へひとり出てゆく。
やがて太陽のところへやってくる。太陽の家は焼けつくような熱さ、太陽そのひとは残酷で怖ろしく、小さな子供たちをとってはむしゃむしゃ貪り食っている。
少女は急いで逃げ出して、逃げて逃げてへとへとになるまで走りつづける。
やがてこんどは月のところへ辿りつく。月の家は氷のように冷たく、まともに立ってもいられないほど。月そのひとは陰険で、意地悪で、少女に気がつくと「臭いぞ臭いぞ、人間の匂いがするぞ」と言って脅かす。
少女は再び逃げ出して、足を引きずって、道すがら泣き泣き、やがて星たちのところへやってくる… 星たちはやさしく親切で、少女にいたわりの言葉をかけ、彼女にすべきことを教えてくれる。
「お前の兄さんたちは、世界の果てのガラス山の上にいる。けれどもそこはひどく遠いから、お前はまず鍛冶屋のところへ言って、自分のために鉄のパンと鉄の靴をつくってもらわなくてはいけない。それからこれを持っていきなさい。決してなくしてはいけないよ」
そう言って、明けの明星がくれたのは、小さな鳥の骨だった。
少女はお礼を言い、鳥の骨を大切にハンカチに包み、言われたとおり、鍛冶屋へ行って鉄のパンと鉄の靴をつくってもらい、それをはいて、ガラス山目指して出発する。…

鉄のパンなんて、どうやって食べるんだろう。硬くて噛めやしないし、呑みこむこともできやしない。血の味がして、ちっともおいしくないだろうし、消化することだってできないだろう… それに鉄の靴だなんて! きっとがっちりと重たくて、歩いても足の形に沿って曲がらないし、夏には太陽の光で蒸し焼きにされるような熱さ、冬にはかちんかちんに冷えて、耐えがたい冷たさだろう。…
それでも少女は鉄のパンを食べ、鉄の靴をはいて旅しなければならなかった。そういうやり方でしか辿りつけないのだ、地の果てのガラス山には。

小さい頃に聞かされたおとぎ話のなかで、白雪姫よりもシンデレラよりも、いちばんはっきりと覚えているのがこの話だった。まるで自分のことのように、今でも鉄のパンの味がこの舌に、鉄の靴の冷たい感触がこの足に残っているほどだ。どうしてこんなにも印象的で、忘れがたかったのだろう?… それはきっと、この話がほかのどの話ともちがって、「昔々あるところに」から始まるのではなく、いちど話が終わって、取り返しのつかないことが起きてしまったところから始まるからだ。
…バサバサバサッ! と激しい羽音をひびかせて、あっというまに頭上高く飛び去ってゆく、カラスに姿を変えられた12人の兄弟たち。呆然と立ち尽くす王様とお妃。… これはいわば、終わりから始まる物語なのだ。
そういう奇妙な物語の構造のせいで、それはながくシルヴィーの頭にひっかかり、その印象を去らなかった。けれども、よく考えていれば、これこそ人間のさいしょの物語の記憶をとどめるものではないか? 終わりからはじまる物語…

自分は誰のところへ行けば、ガラス山へ行く道を教えてもらえるだろうか?
つくづくと考えてみて、シルヴィーは思い至る。もちろんあの子だ。ほかには考えられない。あの黒髪の、涼しい瞳をした男の子。そういうことを教えることは、地上の人間にはできない。星々の息子、汚れなきもの、罪の足枷から解かれたものでなければ… インマヌエル、我らのために与えられしひとりの幼子。…
シルヴィーは、おとぎ話の少女のことを考える。
今まで絹と宝石に包まれて何不自由なく育ってきた幼い王女が、いきなりたったひとり、つらく厳しい世間へ出てゆくのだ…
それに比べたらこの自分はずっとましだ。もとは田舎出の、しがないお針子娘。わびしい屋根裏住まいを何年もつづけてきた。飢えと寒さがどんなものか、貧乏がどういうことかをよく知っている。元の暮らしに戻るだけよ、何てことない。今までのことはぜんぶ、ただ途方もない夢だったのだ、ただそれだけ、ただひとつ… 生まれてはじめて心に芽生えたしずかな思い、ジュスタンへの強くしずかな想いを除いては。…

     ***

狭い路地を曲がって馬車はやってくると、裏ぶれた一軒の安宿の前にとまる。
馬車から降り立ったクロードは、手元の紙片の住所と目の前の景色とを見比べ、明らかに当惑し、ショックを受けている…
シルヴィーが目下のところ身を寄せているのが、このひっそりとした宿屋の一室だ。いま彼女は荒織りの膝掛けにくるまって床にうずくまり、汚れたガラス越しの日の光にまどろんで、猫のように半ば目を閉じてうとうとしている… この部屋の窓からは午後の数時間だけ日が差すのだ。ぜんぜん差さなかった北向きの昔の部屋よりぜいたくなくらいだった。
束の間のひととき、…突如呼び鈴が鳴り響いて、彼女は現実に引き戻される。
扉を開けると、思いがけない来客だ。
「…マドモワゼル」 クロードは帽子を取って、深々とおじぎをした。彼は言葉を失ったようすでしばらく立ち尽くし、それからようやく言う、
「もっと早くにお訪ねすべきだったのですが、あなたの居場所が分からなかったのです」
「まあ、来てくれてうれしいわ。どうぞ入って、狭いけど」

がらんとした粗末な部屋、つい先日までとはあまりにかけ離れた境遇と、にもかかわらずシルヴィーが意外にも気丈なようすであること、などに心乱されながら、彼は勧められるまま腰掛け、つとめて冷静に話し始める…
先方の、シルヴィーへの仕打ちの不当さ、彼女の名義の権利書や、邸宅の譲渡を証明するジュスタンの署名つきの文書などが彼のもとにいまだ託されてあること、訴訟を起こせば充分に勝ち目はあること…
「まあ、なんにしても味方がいるっていうのはありがたいものね。恩に着るわ、クロード」
シルヴィーは心から言う。
「でもね… じっさいに起こったこと、あなたも見たでしょう。いくら法的にどうのと言っても、これが現実よ。力の前には、権利書なんて紙切れにすぎないの、残念ながら。結局のところ、私たちは正式に結婚していたわけでもないから…」
「しかし、マドモワゼル!」 クロードは反論する、「このまますべてを放棄なさるおつもりはありますまい。わが国にはパートナーシップについては長い伝統がある。歴代の王たちだって愛人をもたぬ者はいなかった。ご覧なさい、ポンパドール夫人をはじめ、形骸化した婚姻関係よりも事実上のパートナーのほうが、歴史の上にはるかに大きな足跡を残しています」

「私の母は王党派じゃなかったわ」シルヴィーは皮肉に微笑んだ。「そんなことやってるから政治がおろそかになって革命が起こったんだって、いつも言ってたわ。もっとも、母は政治のことはあまり詳しくなかったから… 革命派の中にも愛人をつくった男はいくらもある、と知ったら、また話は違っていたでしょうけれどね」
「それにあなたは、ただのジュスタンの愛人ではない。オペラ・ガルニエを代表して、皇帝にまで謁見したお方だ。あなたには、アーティストとしての並ならぬ功労が認められてしかるべきです」
シルヴィーは溜め息をついた。
「あたしはもう時代おくれ、もうおしまい。それくらいのことは、自分で分かっていてよ。あなたの気持ちはほんとにありがたいし、貴重なものだわ。けれど今は私、自分のことで戦うより、ほかにやることがあるの」
「ほかにやること?…」
「私は探さなきゃいけないのよ…ある人を。あれからずっと探しているの、エマニュエルという子供なのよ。黒い髪の、とても賢い少年なの。あの子に、すべてがかかっているのだわ」
クロードは困惑して黙りこんだ。

「それは…あなたの子供ですか?」
「いいえ」
「では、ジュスタンの?」
「どちらでもないのよ。ねえ、聞いたことがあるでしょう。<見よ、乙女が子を産むであろう。あなた方はその名をエマニュエルと呼ぶであろう、訳せば『主は私たちとともにおられる』>… そのエマニュエルよ。世を救う者だわ」
クロードはまじまじとシルヴィーを見つめる。彼女は微笑む…
「大丈夫よ、私、別にショックでおかしくなったわけじゃないわ。実は少しばかりこみいっているのですべてをお話しするわけにいかないのだけれど… とにかく、その子供が鍵を握っているの。ジュスタンを救い出すために、どうかしてその子を探し出さないといけないの。名はエマニュエル、黒い髪と黒い目の、賢い、おとなしい子供なのよ。あなたもどうか、見つけたら教えてね」
クロードはしばらく黙る、それから自分に言い聞かせるように、二度、三度と頷く…

「ジュスタンの居場所を手を尽くして探したのですが、今のところ分からないのです。奴らは口を開こうとしないしね、お会いになりたいでしょうけれど…」
「会っても私のこと、分からないと思うわ、今は… 仕方ない、私は自分にできることをやるのみよ、残念だけど」
「彼の身に起こったことですが… 医者が言うには、何かひどいショックが引き金となって記憶喪失のような症状を引き起こすことがあるようです。何らかのきっかけで戻る可能性もあるとのことでした。記憶のすべてが戻るとは限らないらしいが…」
「そうなのね。まあ、彼の状態がよくなろうがなるまいが、私はただ、自分にできることをやるのみよ。さんざん世話になってきたのだもの」
「あなたがどんなにジュスタンを愛してらっしゃるか、お察しします…」
「いえ、そんなことではないのよ」 そう言ってシルヴィーは、クロードの目をじっと見つめる。
「愛なんてものじゃないわ。泥棒うちにも恩義はあるってものよ。犬だって、自分を養ってくれた主人には忠義を尽くすじゃない。その程度のことよ、それだけの話よ」
クロードは再び黙りこむ。それから、かばんを開けて小さな包みを取り出す。
「あなたの金です。正確には、あなたの名義でジュスタンがつくった口座の金だ。連中、こちらまで差し押さえにかかろうとして、厄介なことになっているのです。幸い、まだ私の管理下にありますので」
「ありがとう。たいへんありがたいわ。何ひとつ持ち出せなかったのでね、助かります」
シルヴィーは心から感謝して受け取る。
「また伺います。困ったことがあればいつでもご連絡を」
クロードは連絡先を残して立ち去る。

     ***

じっさい、彼が心配したほどに、シルヴィーは自分の苦境に打ちのめされてはいない。いまの彼女の関心事は、もっぱらエマニュエルを探し当てることだ… すべてのエネルギーはそこへ振り向けられている、暇さえあれば街を歩き、貼り紙をしてまわる… 日ごと、朝に晩に、あらゆる路地、あらゆる裏通りを。… 
こうなってみると、かつての名声と、顔を知られていることとが面倒でしかたない。つねに頭巾を目深におろし、顔を隠して行動し、たまにじろじろ見られていると思うとさっと身を隠すのが習いとなる… 誰かに問いただされると、別人です、よく似ているのです、と言い張った。…

誰もが離れていったなかで、彼がシルヴィーのことを忘れず、味方でいてくれたのは、それでも大きな支えとなっていた。
しかし、それからクロードに会うことはついにない… 数月ののち、モンマルトルの邸宅で抱えていた女中たちのひとり、若いヴィヴィエンヌが訪ねてくる。いちばんシルヴィーのことを慕っていた娘で、いまはさるブルジョワの家族のもとで働いているという。
彼女は気の滅入る知らせをもってくる… クロードが、ソシエテ・ギヨノーの巨額の脱税に関わったかどで検挙され、しばらく前から拘留されていること、それによって弁護士資格、口座管理人としての資格も剥奪され、いまやシルヴィーのすべての口座も凍結されたこと。クロードの側も応戦して当局を提訴し、戦っているが、どうなるか分からないこと…。
「こんなこと、許されるわけがないんです!」ヴィヴィエンヌはすすり泣いた。「あんなにいい人なのに。違法ですよ、審理も通さずに剥奪だなんて。こんな世の中じゃなかったら…」
体制の転覆によって、あらゆる政府組織の内部も混乱を極めていた。旧皇帝派の幹部は職を追放され、一日のうちに顔ぶれががらりと入れ替わった。検察も例外ではない。

それまで、誰もそれを脱税などと呼ばなかった。それは政界のほかのいろいろな勢力との微妙な均衡を保ちつつ、長年にわたって超法規的に編み出されてきた慣習であって、みんながそれで満足していた。
満足しない者がいるとしても、そういう者たちの声は力をもたず、問題にならなかったのだ。今までは。
ソシエテ・ギヨノーの幹部には、クロードの逮捕を知って憤慨する者も少なくなかった。
「脱税だと! 失礼千万だ、我々に対する侮辱だ!」…
そんなことはもちろん、彼らはさいしょから全部知っていた。ジュスタンの不在に乗じて、検察も掌を返して動き出したのだ。というか、じっさいには、現場の血気にはやる連中を上層部がもはやおさえておくことができなくなったのだ…
法の定義も解釈も、すべては力をもつ者が決める。
今や力は向こうにあった。状勢が変わったいま、なすすべはなかった。…
「…だからあなたのお金はもう引き出せなくなってしまったのです。これはクロードさまのポケットマネーで、どうかシルヴィーさまに届けてくれるようにと、代理人から渡されたのです」
そう言ってヴィヴィエンヌは包みを差し出す。とても受け取れないと、シルヴィーは断ろうとするが、彼女は引き下がらない… じっさいシルヴィーも金に困っている、すでに宿屋の支払いもつけがたまって、これ以上遅れるなら出ていってもらうと、脅されている状況だ…

     ***

ヴィヴィエンヌから渡された金が尽きるまでに、結局エマニュエルは見つからない。シルヴィーはとうとう宿を追い出され、路上に身ひとつの己れを見出すことになる…
いまや雨露をしのぐ屋根もない。くたびれたマントに身を包んで大通りを歩けば、辻馬車に怒鳴られ、人々に押しのけられる。裏通りに入れば街娼にすれ違い、たむろするごろつきどもに値踏みされる… 以前に近しく知っていた世界だった。もう戻ることはないと思っていたけれど。
それでも彼女には探す者があった。どうしても見つけ出さなくてはならなかった。ほかのことはどうでもよい、どうあろうと、大した違いはなかったのだ… その思いが、かえっていまの惨めな境遇から、彼女の魂をふしぎに守っていた、彼女自身は意識していなかったが…

ただ、日々の必要に煩わされるのはどうしようもない。
教会の炊き出しの列に並べば、パンと一杯のスープを手に入れることはできた、だがそのためにまだ暗いうちから辛抱強く並び、えんえんと待たされ、家畜のように扱われ、追い立てられる。そして毎日毎日、数百の同じような生気のない顔を見なくてはならない… 
街には宿なしが溢れていた、ほかにもいろいろとやっていく方法はあった。あまり言葉にするのも憚られるが…それにしてもめんどうは尽きなかった。
救貧院に入ることができれば、少なくとも眠る場所の心配はない。だが、そのためには身分証明が必要だ。でなければ後見人の手紙とか… どちらも持たない彼女は、何度通ってもそのたびに別の書類を要求され、ていよく追い返されるばかり。
彼女はいまや、街の広場や、路地裏や、眠れるところではどこでも眠った。それでも、浮浪者や酔っぱらいに悩まされ、数時間以上つづけてゆっくり眠ることはできない、夜も昼も足を棒にして歩きまわり、街をさまよい、点々と場所を変える… 
しだい、彼女は深く疲れていた。日々の苦境は切れ目のない悪夢のようにシルヴィーを蝕んだ。食べることや眠ることで煩わされたくない、こんなこと必要なければいいのに。自分にはまだやることがあるのだ…

     ***

冬が近づくと状況はいっそう厳しくなった。風邪を引きこみ、ひどく熱があって頭がガンガン割れるように痛い。
雨が降るたび、悪夢がよみがえるように、サンジャックでの事故のときに痛めた腰がえぐれるように疼いた。
それでもシルヴィーは探しつづける、何度もあの子の姿を見たと思い、駆け寄っては人々に驚かれ、去ってゆかれて、失望に打たれて立ち尽くす、そんなことの繰り返しだ…
その日も朦朧としたまま街をさまよいながら、シルヴィーは夢うつつに、あの男の子の後ろ姿が通りの向こうへ遠ざかってゆくのを見た気がする…

「エマニュエル! エマニュエル!」
彼女は大声で叫び、全速力で走り出す。と、地が口を開いて彼女を飲みこみ、足を踏み出すごとに一歩一歩、彼女はぐんぐん地の底へ向かって駆けてゆく、とめようがない、どうしようもない… まわりの建物はまたたくまに後ろへ過ぎ去り、暗い壁の中に光る窓を見つけても、手を掛けることはおろか、ゆっくり眺めさえしないうちに飛び去ってゆく。星型のパイに乗ったウサギに衝突して、ウサギをパイの上から突き落としてしまうが、謝るまもなく下へ下へと落ちてゆく、影のような大きな灰色の馬が、驚いたようにこちらを振り返って見ているのが一瞬だけ目に入る、かと思うと赤いバンビがマントルピースの上にいるのが見える… まわりのものすべてが見るまに歪んでゆき、ねじ曲がり、よじれ、生きもののように膨張する… 薄暗闇のなか、ただひたすらに下へ下へ… 彼女のあとからレモンキャンディーのかけらが二つ三つ、それからいくつかのビー玉がぶつかりあって笑い声をたてながらたちまち彼女を追い抜き、はるか下の底知れぬ闇の中へのみこまれてゆく…
あの子の影ぼうしをちらりと見た気がした、だめ、行かないで、私を置いていかないで!… シルヴィーはすでにすごいスピードで駆け下っているのに、さらに加速しようと足を速める…

あっ、あそこの角を曲がった、オレンジ色の街灯の光が、石畳をぼんやりと照らす路地の角、煙草屋の深緑に塗った壁…
と、その瞬間、彼女ははるか上のほうの、別の階に立っていて、あかるい窓のところで、あの男の子とすぐそばで向かいあっている。彼女はじっと見つめる、その黒い瞳を、澄んだまなざしを、星々の息子の額を。
だが男の子は目を伏せて、うつむいたままだ。シルヴィーは全身の神経を集中させ、ありったけの力をこめて激しく食い入るように見つめつづける、心の中で強く呼びかける、答えを教えてくれるまではあなたを放さない、ジュスタンを贖うには、カラスに変えられてしまったジュスタンを元の姿に戻すにはどうしたらいいか教えて。…
やがてとうとう、子供はその切れ長のひとみをこちらへ向け、その長い睫毛の下から彼女のほうを眺めやって、かすかに…ほんのかすかに、それと分かる程度に、微笑んだ。それだけだった、子供は口を開かなかった。けれどもシルヴィーの頭の中に、はっきりとその声がうちひびいた。一度も聞いたことがなかったのに、はっきりとその子の声と、分かるひびきだった。その声はこう言ったのだ。
「もし、アレクサンドルⅢ世橋の欄干の上を、100回つづけて往復することができたら…」













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