2010年08月27日
この夏の1本♪
<愛しのアクアマリン>
2007年、アメリカ。配給、フォックス。
主演、エマ・ロバーツ、”ジョジョ”、サラ・パクストン。
監督・・・スミマセン、忘れました。
ちょうど今の季節、あとちょっとで夏も終わりってときの物語。
この夏海に行った方、行きそびれてる方もぜひ。終わりの方には花火も出てきます♪
手に取ったときはあまり考えてなかった。
自分もちょうど人魚の出てくる話を書いていたときだったので何となく親しみが湧いたのと、サラ・パクストンの人魚がかわいかったので。
嵐の晩に人間界へやってきた人魚、アクアマリン。
3日のうちに<愛>を見つけないと、父親に連れ戻されて不本意な結婚をすることに。
そこで、友だちになった二人の女の子、クレアとヘイリーが彼女を助けるべく奔走する・・・。
ティーン向けのおバカなラブコメディーって感じのジャケなんですが、予想を裏切る快作。
って言ったら失礼だけど・・・
ぶっとんだ設定なのに筋の運びがテンポよく、変化に富んで、すごく説得力がある。
完全なハッピーエンドじゃないところがリアリスティックです。でも、後味はすがすがしい。
こういう脚本が書けたら本物だなぁ・・・と思っちゃいました。
「愛なんかなかった・・・」
意中の彼に誤解されて絶望したアクアが海に帰ろうとするのを、必死にとめるヘイリー。
「諦めないで! 私もほんとは知ってるわけじゃない、雑誌でしか読んだことないけど・・・。
でも、みんながあんなにまでそれを欲しがるのには、きっとわけがあるんだわ」
「それは何?」
ときかれて、ヘイリーは必死に考える。
「・・・愛っていうのは、魔法にいちばん近いものなの」
ここのところは、なかなか本質を突いていて名場面です。
人間模様の描き方がムダなくかつ巧み。
身勝手で二人をふりまわすアクアですが、二人がそれまで気づけないでいた視点を教えたりもする。
二人ですら邪険に接していた、変わり者だけど心の優しいレナードに、ただひとり心を開いて接することができるのがアクアだったりもする。
恋敵で、意地悪グループのリーダーのセシリアも、甘やかされっ子のお嬢さんと思いきや、目的を達するためにはとんでもなく勇敢だったりもする。
世の中に完全な善も悪もない。
善人にも欠点があるし、悪者のなかにも美徳がある。
そういう微妙なところがさりげなくきっちり描かれてます。
ときにはシュール。
クレアのうちにあった貝殻に、いきなり海の底から電話がかかって来て(!)、「何をやってるんだ!」とアクアがお父さんに怒られていたり。
人魚なのに普通に英語をしゃべる。人間界と魚の言葉すべてをしゃべれるそう。
「あなたは何語をしゃべれるの?」ときかれたヘイリーが、
「・・・スペイン語のクラスでCをとった」とマジメに答えるのが面白い。
でも、もともと海の出身なので、ときどき言葉遣いがちょっと海っぽくなる。
Bull shit! (クソ喰らえ!)となるべきところが、Bull shark! (サメ喰らえ!)になったり。
Bastard! (サイテー!)というべきところが Barnacles! (フジツボ)になってたり。
Holy mackerel! (ひぇーっ!)という場面も。
音楽も凝ってて、たくさんの曲が使われてる。
歌詞がいちいち場面に直結してて。この映画のためのオリジナルも。
アクアの青い髪、素敵です。
こんど私が青いエクステつけてたら、この映画の影響と思ってください。笑)
物語の運びのテンポってすごく重要だと思うんです。
同じ時に古典的名作のサガンの<悲しみよこんにちは>を映画化したやつを見たんですが、原作の雰囲気をきちんと伝えていてよくできた仕上がりだと思ったものの、どうも・・・寸詰まりな印象が。
前半、原作にない回想場面を入れたりして長々と間延びしてるのに対して、後半の心理戦のくだり、ずいぶんはしょっちゃったなぁ、もう少し丁寧に描けばいいのに、という感じで。
まぁ、それは編集の問題なのかもしれませんが・・・
そんな点で本作はすごく構成が、バランスとれててよい感じ。
脚本書くうえでもすごく勉強になるので、映画はできるだけたくさん見ようと思ってます。
私のなかで「映画の基本形」は、60年代フランスの<冒険者たち>。
これを超える作品ってあまりないと思う・・・。
皆さんの「この夏の一本」は何でしたか??