2020年12月06日

英→仏翻訳の授業 OmegaT



画像:自動翻訳ソフトOmegaTで英文を翻訳しているもよう。
緑部分が原文、黄色部分が訳文と視覚的に分かりやすい。
ほんとは、未翻訳部分は紫で表示される。

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英語とフランス語は自由に行き来できるようになりたいな、瞬時にもう片方で言い換えられるようになれたらいい、と思っていた。

院の履修単位のうち、自由科目として、自分の学科以外の授業でも取れるものがひとつある。
自由といっても、何かしらひとつ取らなくてはいけない。
色々見ていたら、翻訳の授業というのがいくつかあるのに目が留まった。
自由といっても希望者が多い場合はその学科の生徒が優先になるし、そもそも時間帯が自分のとるべきほかの授業とバッティングしてたらそれもダメ。
いろいろと淘汰されて、取れることになったのは、<ハイパーメディア>という授業。
さいしょは何のことだか分からなくて、検索してしまった。

「ハイパーメディアは、ハイパーテキストを論理的に拡張し、グラフィックス、音声、動画、テキスト、ハイパーリンクなどを絡み合わせて、一般に非線形な情報媒体を形成したものを指す」(Wikipediaより)

うーん…ついていけるのか私?
別に<ハイパー>とかじゃなくても、ふつうの翻訳でいいんだけど… とさいしょはやや怖気づいていたのだが、出てみたら、先生が英語の発音とてもきれい。
お~ 久しぶりに聞く美しい英語!
私、学科外なのに問題なく受け入れてくれたし。
説明も分かりやすくて丁寧だしよさそう。。
これはなんとかいけそうかも。。

コロナ対策がしっかりしているのもポイント高かった。
秋学期が始まった時点での大学側の取り決めとしては

・授業は出席制もしくはオンライン
・出席の場合はマスク着用
・教室に入っていいのはいちどに15人まで
・換気に留意のこと

という感じ。あとは先生個人の裁量。
当然ながら先生によって意識の高さもバラバラなので、かなりストレスを感じることも多かった。

この授業では、隔週で出席制とオンライン交互。
出席の週は、生徒半分ずつ入れ替え制で、一コマ通常は3時間なのだけど前半組と後半組で1時間半ずつ。
先生は3時間の間に2回同じ授業をやることになる。
私は後半組だったのだけど、前半と後半のあいだには必ず10分くらいの換気の時間があって、窓は常にオール全開だし、隣り合って座ってる生徒がいると席をあいだにひとつ開けるよう求められたり。
先生自身がとても意識が高くて、すごいストレスフリーだった。

授業については、「翻訳」というのはフランスにおいてはふつう「英→仏」の翻訳、ということらしい。
いや、私には逆の方が分かりやすいんだけど… まぁ、仕方ないか。
画像やグラフ、URLなどの入った複合的なeブックを、自動翻訳ソフトであるOmegaTというのを使って訳していく、という内容。
ソフトの画面にいちどに表示されるのは一章分。
フレーズごとにセグメントとして分類され、セグメントいくつ、という番号が表示される。
そして、そのセグメントごとに訳をつけていく。

色んな辞書的機能を自分でカスタムして追加したり、文例集を追加して、翻訳すべき内容に応じて自動で出るようにしたり。。
(このへんのこまかな機能は、いまだに完全には分かっていない)

でもこの授業はけっこう真剣。
できれば仕事としてもこういうのできるようになったらいいなと思ってたし。
内容自体面白かった。
けっこうな長さの複雑なフレーズの仏訳が、ボタンひとつでポンと出てくる感動。
さいしょはそれが、面白くてたまらなかった。
こんな長いフレーズ、自力でやったらひねり出すのに15分くらいかかるわー、とか。
この単語やこの言い回しに相当するフランス語はこういうのかー、とか。
自力でやったら知らない単語にぶつかるたびに調べて、文脈からどの訳語をとるか検討して、となりますから。
単にフランス語の勉強としても役に立ちそう。

授業で使われた文章が環境系のテーマっていうのもよかった。
高校生のときやった長文読解のよくあるやつみたいな感じで、とっつきやすくてなじみがあるし、感覚的に分かる。

ただ、自動翻訳といっても変な文章になってることも多いから、人の目で検証して、手動で手直ししていく。
フランス語が母国語でない私にとっては、これがいちばん難しい。
基本的な文法が変とか、形容詞のかかり方が変とかは分かるのだが、ある言い回しが「いや、フランス語ではこういう言い方はしない!」とか、そういう自然な感覚がないから、すごい大変。
それはたぶん、非母国語→非母国語の翻訳をする場合にソフトではカバーしきれない点ね。。

11月からは、ロックダウンのためオールオンラインに。
Zoomは人のプライバシーをリスペクトしないから、というので別のプラットフォームを使っていたが、途中で画面がフリーズしてしまったり音声が消えてしまうトラブルが続発し、さらに別のプラットフォームに。
Zoomを使わない、という先生の方針も、コンプライアンスをきちんとしてる感が出ていて好もしい。
まぁ、私も含め、大方の生徒はこれ以外の大方の授業で否応なくZoomを使ってるから、あんまり意味はないのだけど、それでも。

ただね… さいしょのころは、お~ 美しい英語!と思って、先生の英語を聞くこと自体が授業の楽しみのひとつだったのに、さいきん、生徒たちがついフランス語で質問するので引っぱられて、というか(先生的には)程度を下げて、フランス語で授業するようになってしまった。
どっちも流暢で、先生にとってはどっちでも変わらないのだろう。
でも聞いてるとやはり、英語の方が母国語なんだなっては思う。
そして私には英語の方がよっぽど分かりやすいんだけど!!

そして先週、課題が出て。
113のフレーズからなる薄いeブック。
提出期限は4日後。
挿入画像やタイトル、URLなども全部含めて113フレーズなので、じっさいに訳す必要があるのは100フレーズほど。
でも4日間の突貫工事で初心者がやるにはけっこう長い。
とりかかる前段階の、データを圧縮したり解凍したりする作業でつまづいて、先生に助けを求め、答えが来るまで作業がストップしたり。
いろいろあったものの、なんとか期限までに提出できた。
いや~疲れた~ この週はほぼこれにかかりきりの大仕事。
やれやれ~

内容はこれも環境系のなじみある主題で、読みやすく、英語の原文に目を通して理解できないことはほぼない。
じっさいの翻訳作業に入ってからはとくに問題なし。
ただ、集中できずに気が散ってしまう、つい一休みしたくなってしまう要因というのはいくつかあって。
それはおもに原文じたいの問題。。

・冗長である、だらだら長い
その段落、もっとぎゅっと簡潔にまとめられるだろー! 訳すやつのことも考えろ!って思っちゃう
・新味のない、当たり前のこと言ってる。しかも繰り返しが多い…その内容、コトバを変えてそんなに繰り返す必要ある?と思っちゃう
・主部のウルトラ長い、頭でっかちな構造の文が多い。えんえんそういう文が続いて、だんだんいい加減にしてくれって気になってくる。
英語ってそもそも、主部の長い構造の文、嫌うんじゃなかった?
自動翻訳だと当然ながら、同じような構造の仏文ができてくる。仏語だって主部があんまり長いとプロポーションが悪いのは同じだ。勝手に構造を変えて、もっとすっきりした文に直していいものか、それともこの文章のまずさまで含めて忠実に再現すべきなのか?って迷う。
うーん。原文のクオリティーってやっぱり重要だわ。
仕事のはかどり具合に絶大な影響を及ぼす。

今回の課題は、訳したら終わりではなく、さらにいくつかの質問に答える形式でレポートを出さなくてはいけない。
いくつかの機能ごとにそれを使ってどういう訳を出したか例を挙げて説明せよ、的な。
それがあるので、ソフトで訳しながら紙のノートにセグメントごとにメモしていって、ひととおり訳が終わるとそのノートを片手に全体を俯瞰して、どの質問に対してどのセグメントの例を挙げるか考えた。
地味な事務作業でめんどくさいのだけど、ここで翻訳者としてのセンスをアピールすべきところなので、気合を入れて仕上げ。

ここで不便だなと思ったのは、ふつうの状態だとすべてのセグメントに番号表示が出てないこと。
そのセグメントの上でダブルクリックしないと番号が出てこない。
(その状態が、上の画像でいうと、上から3フレーズめのセグメント81。)
一度にひとつの表示しかできないみたい。
だから何番目のセグメントに行きたいなと思ってもぱっと一発でそこへ飛べない。
この辺かな?と見当をつけてダブルクリックしてみて少しずつ近づいていくしかない。
それがすごく不便。
何でこんな仕様になってるのかフシギ。
たとえていうと、通りの建物に番地表示が出ていなくて、「この辺かな?」と見当をつけて適当にピンポンして、「○○番地に行きたいのですが、お宅は何番地ですか?」って聞かなくてはいけないようなもの。
変でしょ、それ。
ふつうの状態ですべてのセグメントに番号表示が出ていてほしい。
でないと、番号がついてる意味がなくない?

ともあれ、この授業は珍しく、自分のやりたいこと、興味あることとわりとリンクする内容だったのでメモがてら、まとめてみた。

ついでに、今回作業するなかであたらしく学んだ単語をメモしておく。。

<英>decarbonization
<仏>décarbonation/décarbonisation <形容詞>décarboné(es)

<英>supply
<仏>approvisionnement

<英>offset
<仏>compenser

ここは、CO²の排出が電気自動車の使用によって大幅に抑えられる代わり、そのための電気の生産によって幾分かは出てしまう、という文脈で、いわば逆オフセット、逆相殺みたいな。。
ネガティヴな文脈なのでoffset, compenser は違和感あったのだが、でも、そう言うらしい。

<英>location
<仏>emplacement

仏語の location に「場所、配置、ロケ」といった意味はない。
「賃貸借、賃料」という、全然別の意味になってしまう。
たまにこういうのあるので厄介。

<英>congestion
<仏>congestion

英仏とも、「充血」という意味とともに「渋滞」という意味がある。

<英>qualify
<仏>qualifier

形容詞がこれこれの語を「修飾する」、というさいに使う。

などなど。。








































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Posted by 中島迂生 at 23:17Comments(0)巴里日記2020冬