2015年11月22日

8月おわり~ サヨナラダケガ人生ダ


     

つくば・天久保のバー<ベースメント>。以上、お店のサイト等から。

  

お店のジンリッキー、ペペロンチーノなど。。

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つくば市の天久保に、30年近く続いている<ベースメント>という素敵なバーがあります。
鯨が踊る壁面の大きな看板を目印に、鯨のお腹の中へ吸い込まれるように地下へ向かう階段を下りると、ほわーっと癒される入口の青い光。
中は石とコンクリと金属の、無機質でクールな空間。
30年前に超前衛だった感じ、今では文化遺産級です。
ポール・オースターが「エレガントな前衛」だった頃の的な。。

つくばにいた去年まで、私の欠かせない癒しスポットでした。
こちらに住んでからも、「あ~またあのカウンターでバーボンを飲みたいな」と思うことが何度も。
なので今回こちらにいるあいだ、その癒しエネルギーをチャージすべくちょくちょくお邪魔してました。

思えばこういう感じのお店が、私はずっと好きだったなぁと。。
いわば90年代スタイリッシュ。
ウッディなバーやパブが受けるなか、一方でこうした無機系バーの系譜というのも確実に存在した。
私が知るなかで、そうした雰囲気をもっていたのは新宿の御苑寄りにあった<ビザール>、あるいは高田馬場にあった<フライヤ>、いずれもとっくになくなってしまったけれど。
思えばゴンクールのあの店もそんな感じだった。
帰りに恐ろしい思いをしてから、足が遠のいてしまったけれど。・・・

ここのきりりと冷えたバーボンやジンリッキーを前に、ぼうっとカウンターで過ごす時間が好き。
それだけで心満たされていった。
あるいはマスターとお喋りしたり、ときにはDVDをかけてもらったり。。

ここのお店の空間そのものが好き。
看板の鯨マークもあいまって、暗くて広くて細長い店内、鯨のお腹の中のよう。
入ってすぐの金属製カウンターは湾曲した手すりがついて、夜の海を航海する船の甲板のよう。
それが鯨の中のピノキオのイメージともつながります。

トイレ内は全面淡い銀色、宇宙船のコックピットのよう。
テーブル席の床面は月の世界を模した銀色のでこぼこ。
奥のバンケット席では椰子の木が枝を広げていたり。
なんとも想像力をかきたてる、シュールで遊び心に溢れたお店。。

内装もすべて開店当初からずっと変わらないそうで、すごいなと思っていた。
でも実は、それまで続いていたこと自体奇蹟なのだった。
こちらへ戻るさいごの日、カウンターでこのお店への愛着を熱く語っていたら、マスターを心苦しくさせてしまったようで、「実は・・・」と打ち明けられてしまった。
「・・・移転計画が」・・・ガ、ガーン。。。

繁華街の天久保も最盛期と比べさびれるばかりで、しかも大箱ゆえ維持がほんとに大変だそう。
一介のお客にすぎない私にはどうしようもできないけれど・・・
サヨナラダケガ人生ダ。。
これまで、好きだった居場所をいくつも失って失ってきて、ここへきてまたしても失うのか・・・。

こういう歴史あるバー、ひとつの時代を刻む金字塔として、個人レベルではなくもっと大きな枠組みで保全を考えるべき!と思います。
そりゃ奈良の大仏ほどの歴史はないでしょうが、かけがえのない価値に変わりはないのだから。

マスター、移転先でもお店続けられるようで、大きな慰めではあります。。
私はといえば、・・・そろそろこちらでもまったりできる居場所を見つけなくては。。





  

Posted by 中島迂生 at 23:09Comments(0)つくば日記2015-8・9月