2021年04月03日

翻訳デビューから3ヵ月、感想など。。



(釣り雑誌<RIPPLE>の創刊号。画像をクリックするとサイトへ飛びます。
釣りに興味のある方は、ぜひどうぞ!)

こちらは英訳ではじめて仕事をいただいた釣りのウェブマガジン。
一冊の雑誌を丸ごと任せてくださいました。
始めたばかりで全く実績のなかった私に、光栄なことです。
知識とセンスと経験を総動員して、全力挙げて仕上げたのは言うまでもありません。
おかげでちょっとだけ釣りにも詳しくなりました。

以来、それから色んな依頼者さんの色んな文章を手掛け。
いろいろと勉強になったので、少しメモしておこうと思います。
歌詞の英訳については以前に書いたので、ここではおもに文章の英訳についてね。

クラウドソーシングサービス<ココナラ>でお仕事を受けるようになってもう少しで3ヵ月。
なんだかランクがいろいろとありまして、少し前まで私は<レギュラー>というランクだったのですが、気がついたらいろいろ飛び越して<ゴールド>というランクになっていました。
イラストと翻訳と2種類のサービスをやってます。
イラストはいまのところ、いちばんさいしょに来た1件だけで、あとはぜんぶ翻訳。
英訳と仏訳と両方やっていますが、やはり英訳の需要の方が多いようです。

翻訳のサービスを始める前は、私、Google Translate のような翻訳ツールって、ほぼ使わなかったのです。
フランス語でレポート書いたりするときも、いきなりフランス語で書いていた。
翻訳ソフトにはあまりいいイメージを持っていなかった。

以前、つくばの研究所で国際事務の仕事をしていたときのこと。
ハンガリー人の研究者が、ハンガリー語の事務書類を、気を利かせてGoogle Translate で日本語にして送ってくれたのですね。
だけど、それが、何が何だか分からないレベルで。
そのときのひどい日本語があまりに衝撃的で。
そのイメージが、大きかったのですよね。

でも、去年、院の授業で英仏翻訳をソフトを使ってやるやり方を習ったのです。
そのときに、先生が「ソフトっていうのは基本的に頭悪いんだよ。人間が知性を使って修正しないとね。それでも、一からやるよりは早い」と言っていて、なるほどと思って。
ブログでも以前に書いています。OmegaT というソフトを使った翻訳の授業ね。

あと、去年の夏ごろかな?
イギリス人の昔からの知り合いがものすごく久しぶりにメールをくれて、「君のブログを読んだよ。面白かったよ」って書いてくれていて。
えっ、私日本語で書いてるのに、あれ全部どうやって読んだの?!って思ったら、
「翻訳ツールで読んだよ。それで大体問題なく読めたよ」って。
へーえ、今の自動翻訳って、そんなに精度が上がってるもの?って思って。

それで、授業で読まなきゃいけない仏語のサイトとかを翻訳ツールで読んでみたら、ほんとに、けっこう問題なく読める。
これなら仕事にもつかえるなと思って、それから少しアレルギーがなくなって、使うようになりました。

いまは、まず翻訳ツールにかけてから、原文と見比べながら手作業で直していくようにしてる。
大方の人はそうやってるのだな、きっと。

英語のネイティヴだけでなく、英語が母国語ではない色んな人が読むことを想定して、なるべくシンプルで分かりやすい文体を心掛けている。
原文の意味は正確に置き換えるように気をつけるけど、文章構造など、まんま直訳でなく、少し手直ししたほうがいいなと思えるときは直しちゃいます。

もちろん、原文じたいがとてもすっきり整っていて、いい文章だなっていうときには、そのよさをなるべくそのまま伝えられるように気をつけて訳している。
でも、そういう原文ばかりではないの。
別にプロの文章ばかりではないのだから、それは当然。

人によっては、二重否定や逆接の接続詞の多用が癖になっていて、曲がりくねってややこしい文体だったりすることもある。
それでも、日本語で読んでる限りは、だいたいの文脈、方向性は分かっているし、あたらしい情報を無意識に拾いながら読むので、とくに気にならずにさらっと読める。
訳す段になってはじめて気になってくるのね。

そういうときは、訳のなかでしれっと手直ししてしまいます。
二重否定はふつうの肯定文に置き換えてしまったり、逆接の接続詞も、単なる癖で、意味としては単純逆接だったりする場合はカットしたり。
なんか、道路を舗装することだけ頼まれているのだけど、あまりに曲がりくねってやりづらいので、道路自体をまっすぐに直しながら舗装を進めていく感じ。

あとは、あんまり長い文は二分割したり、この要素はとなりの文に移動したほうが収まりがいいな、っていう場合には移動しちゃう。
あと、同じ言葉の繰り返しがあまりに多くてくどいなというときは、適当に間引いたり。
そういうことはやっちゃいます。
今のところはみんな大絶賛してくれていて、文句を言われたことはありません。

量をこなすうちに、翻訳者としての自分のミッションが見えてきた気がするんです。
ミッションというか、目標というか、裏テーマというか。
それはね、もちろん依頼者の方にあえて言うことはないけれど…
「できれば、(必要とあれば)原文よりさらにいい訳文を提供する!」ってことなんです。
これに尽きます。

外国語でよりよい文章、よりよい表現を追求することには終わりがない。
だから好きなんだな、きっと。
どんな文章を訳しても、何かしらあらたに学ぶこと、あらたに知る語彙や用語がある。
新しい単語をひとつ知るたび、100円玉を拾ったみたいにうれしい。
語彙は、増えれば増えるほどうれしいですね。
いくらあっても困らない。とくに英語はね。

逆に、それが日本語でのライター業が続かなかったひとつの要因でもあるな。
母国語で書いてる限り、何の成長もないですからね。
なんか、面白くないんだよな。
母国語の文章力なんて、だいたい十代のうちに完成してしまって、それ以上伸びることはない。

というか、それ以上にいろいろ覚えて典雅な文章や難解な文章を書けるようになっても、みんな読んでくれないんですよ。
受けないんだわ。
フランソワーズ・サガンだって、ご覧なさい。
70代で亡くなるまで一生書いていたけれど、18のときに出した<悲しみよこんにちは>を超えることはついにできなかった。
「超える」っていうのは「世間の話題的に」ってことね。

サン・テグジュペリだってそう。
<星の王子様>のあとも本人は大まじめにいろいろ書いたのに、みんな結局<星の王子様>しか読まないじゃないですか。
世間の人々って思いのほか、めんどくさいことが嫌いで、手軽に読めるのしか読まないんですよ。

私自身、今くらいの文章力はだいたい14の頃にはすでに完成していたと思ってる。
今このブログで書いてるくらいのレベルの文章はね。
というか、これ以上に難解な、論文みたいなの書いても誰も読みませんからね。

でも、これが外国語になると、まだまだ需要のある範囲で自分の中に伸びしろがあって、だから面白いんです。
「ここもっといい表現ないかな」って色々考えて調べたり、思いついたり、そういうのが楽しい。

そんなわけで、翻訳業、わりと楽しくやっています。
クラウドソーシングサイトでの私の翻訳サービスはこちら。
もしご興味あればどうぞ。

https://coconala.com/services/1517547
https://coconala.com/services/1517546





















*****************************************************







  

2021年02月27日

歌詞の英訳のコツなど



年明けから始動したクラウドソーシングサービス、おかげさまでぽつぽつとお仕事いただいています。
さいしょのイラストのあとは翻訳関連の依頼が多いです。

翻訳でさいしょに納品したのは日本語詞の2曲の英訳。
私がここで宣伝してもご迷惑にはならないだろうと思うのでこちらに。

https://www.amazon.co.jp/dp/B083NT7GSY/ref=cm_sw_r_tw_dp_Y4XK0H1XW9BCGH6PSF2C

<アイムアグリーバー!>という、音楽テーマのマンガ。
マンガ中で登場するオリジナル楽曲を、実際にリリースするプロジェクトが進行中なのだそう。
2曲ともいい曲でしたよ。
仕事として終えたあとも時々個人的に聴いてるくらい。
英訳は英語の恩師にも目を通してもらって、結果とても喜んでいただけました。

久しぶりに歌詞の英訳をして、いろいろと思うところがあったのでメモしておこうと思います。
クラウドソーシングのサイト内で、歌詞の英訳に特化したサービスも出そうかなと思ってるんですよ。
その下書きとして…って、あんまり長文は文字数制限があるからムリだけど。。
オリジナル曲とかの歌詞の英訳を自分でやってみたいと思う方には参考になるかも。

 ***

洋楽、山ほど聞いてきたので割と蓄えがある感じです。
言い回しとか。
そのうちの数百曲は、自分でギターやピアノの弾き語りでカバーしたし。
自分で英詞を書きはじめたのはハタチくらいかなぁ。

メモがてら、今までよく聞いてきた洋楽のアーティストも挙げておきます。
ここは英訳の話なので英詞のアーティスト限定ね。
とくにマニアックでもないと思うなぁ。
めっちゃ王道ですよ。

ビートルズ。OASIS。ポール・ウェラー。
スティング。Savage Garden。ストーン・ローゼス。
クラプトン。エルトン・ジョン。ビリー・ジョエル。
BON JOVI。エアロスミス。Ace of Base。
レディー・ガガ。シンディー・ローパー。
アデル。シャーデー。ジューン・テイバー。などなど。
ぱっと思いつくのはこのへんかな。

いただいた歌詞にさっと目を通すと、youtube の右側に関連動画がバーッと出てくるみたいに、自分がいままで知ってる、似た感じの曲が脳内に次々再生されてくる。
表現に煮詰まったときは、あらためてそういう曲の歌詞を見返してみると、ヒントになったり。

詩的な感じで訳すのはけっこう得意。
どうすると詩的になるかっていうと、
まあ… 日本語とあまり変わんないかな。

たとえば歌詞をそのままgoogle translate とかにかけると、あるある→
・ほぼすべてのフレーズが I で始まる
・that S+V 節のオンパレード など。

詩に人称はあんまりいらないです。
日本語でもそうでしょ?
文脈で分かるし。っていうか、文脈で分かるように訳さなきゃ。

that S+V 節も説明的で、あんまり詩的じゃない。
省略したり、ing 形に変える、そもそも言い回しを変える等。
「あー、原詞とぜんぜん違うけど、なるほど意味は伝わるねー」みたいなの考えるのが面白い。

あと、なるだけ短くシンプルにそぎ落としてあげると詩的になります。
俳諧みたいにね。

 ***

ここまでは(字幕や歌詞カードとして使う)単なる英訳の話。

ところで、それと、英語でそのまま歌えるカバーバージョンをつくるのでは、制作に要する時間とエネルギーがまったく違ってくる。
ここから先は、カバーバージョンをつくる話を書きます。

そもそも、言語じたいの特性として、同じ音節の数では日本語の方が英語より、少ない内容しか言えない。
英語の方が、多くの内容を言うことができてしまう。

だから、日本語詞をメロディーそのままに英語に置き換えようとすると、どうしてもメロディーが余ってしまう。
余った分は訳者が、もとの歌詞の世界観を拡張する感じでイメージを広げ、フレーズを加えないといけないのです。
ここが、センスが求められるところ。

この音節の問題を意識するようになったのは、私の場合、<エーデルワイス>がさいしょです。
11才くらいのとき。

英詞と日本語詞を比べたときに、日本語の方があまりにおおざっぱなのにショックを受けて、自分で「正確に」訳し直してみたの。
そしたら、フレーズが余りまくってしまって、とてもメロディーに乗せて歌うことができなくなった。
それで、ああ、忠実に訳すとこうなっちゃうのか、日本語詞がこんななのは仕方ないのか… と納得したのです。

その逆で、日本語詞から英語バージョンをつくるさいの問題を考えさせられたのが、14才くらいで知ったGame's Over。
これは荒井由実の<ノーサイド>の英語カバー版。
A.S.A.P.という黒人女性3人組のグループが歌っている。
コーラスもパワフル、サウンドも厚みがあって、今でも、この曲に関してはオリジナルよりこっちの方が好きかも。

さいしょに聞いたのがこっちだったのでこっちで慣れていて、ユーミンのオリジナルを聞いたときに「…なんかやけに寂しい曲だな」と思ってしまった。
まるで別物。
でも、歌詞を読んでみるとすごく忠実に訳されてるの。

ただ、そんなわけで英語ではより少ない音節ですべてを訳せてしまうから、もともとなかったフレーズも加えてけっこう膨らませてある。
「そこのフレーズ、別にいらなくない?」と思っても、仕方ないのですよ、メロディーが余ってしまっているのだから。

こうした言語的特性の違いを踏まえたうえで、メロディーに乗せ、文法的にも変でなく、一貫した世界観を伝えられるような詞をつくっていく必要があるわけです。

 ***

このほか、フレーズの作りこみ方としては、メロディーに乗せてもなるだけ話しているときと同じような抑揚になるのが理想。
そして、できることなら一番強い意味を持つ単語が、メロディーのなかで目立つ音のところにくるようにもってくる。
このあたりも、日本語で詞を書く場合と同じですね。

そのためにフレーズを工夫するか、自分で曲を書いている場合はメロディーの方を変えちゃうか。
あ、私、曲も書きます。
劇団で使う曲も自分で書いていたし、いまは映画をやってるけど、映画で使う曲も自分で書く。
でも、人様から歌詞の英訳を依頼された場合、私が勝手にメロディー変えるわけにいかないのでw

音節が余ったら使える調節用のボキャブラリーとかもあるとよいですね。
1音節余ったらこれ、2音節ならこれとこれ、3音節ならこれ、みたいにw

あとできる限りにおいて、脚韻を踏むようにしたい。
ここがいちばん難しいところかも。

正直、自分の場合、95%は小一時間もあれば書きあがるが、このさいごの脚韻のところが決まらなくて一週間くらいかかったりする。

脚韻がかっこよく決まらないと自分のなかでどうも納得いかなくて、シャワーを浴びながらとか、寝付くまでとか、エンドレスでずーっと考えてしまう。
でもたいてい、さいごには何とか形になります。

英詞のなにがすごいって、あの脚韻という概念、シェイクスピアのソネットの時代とかからずーっと変わらないのですよ。
いや、もっと前からかもしれん。
あの<型>が、デスメタルとかそういう極端なものまでずーっと貫いているんです。
すごくないですか。

でもじっさいは、Change the world とかだって、改めて歌詞思い出してみると、サビのところはあんまりちゃんと韻を踏んでいなかったりする。
それでもあれだけヒットしたのだし。
まぁ、クラプトンはギタリストであって詩人が専門ではないのだからそんなことでごちゃごちゃ言うのはお門違いですが。
一番重要なのは韻じゃないってことです。
(クラプトンと比較するなって話ではあるw)

というわけで、歌詞の英訳のコツとしてはこんなところです。
挑戦してみたい方は、よかったら参考にしてみてください。

 ***

自分の宣伝もしておきます。
私の登録しているクラウドソーシングのサイト<ココナラ>のページはこちら。
https://coconala.com/users/1974584
現在、イラストと翻訳の仕事をお受けしています。
















**************************************************



  

2021年01月29日

イラストの初仕事:ノートルダムと白いドレスの少女



さいきん、はじめてお仕事で描いたイラストです。
主要モチーフは、左側の、パリのノートルダム。
私がいちばん美しいと思う、斜め後ろからの眺めです。
右上が、そのノートルダムの上から望むパリ市街、右下はアレクサンドル三世橋という橋です。
近景はノートルダムのガーゴイルたち。
でも、実はこの絵の主人公は、橋の上にたたずむ白いドレスの少女。
発注から納品まで、二週間くらいかかったかな。
あたらしい経験で、いろいろと学ぶところがあったので、メモしておこうと思います。

   ***
 
少し前に登録して始めた<ココナラ>というクラウドソーシングサービス。
といっても初心者にそうそう仕事など来るはずもありません。
だいたい、知られてないし。。
<ココナラ>ではそういう人にとってうれしい<公開依頼>という、なんというか、競合入札みたいな制度があります。
「こんな仕事をしてほしいのですが」「こんな作品が欲しいのですが」という希望を、個人なり企業なりが公開すると、それを見たなかで、「それならできそう」「やってみたい」っていう人が手を挙げる。
そのなかで選ばれた人がその仕事を得ることになる。

これのいいところは、手を挙げる人はただ手を挙げるだけで、その時点では求められる作品をつくる必要はない。
ポートフォリオを送ったりしてアピールするのは自由ですが。
選ばれるまではつくる必要がないので、時間とエネルギーをムダにすることがない。
良心的でありがたい制度だと思います。

そこで手を挙げていたもののひとつで、私に「お願いします」って来た。
さいしょの仕事を得るまでがたいへんで、長くかかると聞いていたから、びっくり。
パリの風景を描いてほしいという案件だったのだけど、「作風がとても気に入りました」と。
クラウドファンディングのビジュアルに使うそう。
うれしいことです。最善を尽くす!と心に決めた。

現在の私のスタイルは、
アナログで紙面にボールペン等で線画→色鉛筆で着色→スキャンしてPhotoshopで修正・調整→jpegにて納品
というもの。今後は分からないけれど、目下はね。

正直、ものすごく大変だったけど、それはたぶん初回だから、方法論が確立していなくて試行錯誤でやってたから。
おそらく今回がいちばん大変だったので、次回以降はもうちょっとシステマチックにやってけるはず。。

   ***

クライアントさん自体はたいへんいい方で、求めるポイントをきちっと説明してくれたし、それ以外は全面的に私を信頼して、任せてくれた感じだった。
好きにさせてくれる人って大好き。
初回がこういうクライアントさんでほんと、ラッキーだった。

「パリのどこを描きましょうか」と聞いたら「詳しくないので好きな場所をお願いします」と。
えーっ、そんなところから私が決めていいんですか。それなら喜んで。
「ノートルダムを描きたいです!」と画像を送ると、「ではそれで!」ということに。

「風景のなかに白いドレス姿の少女を描きこんでほしい」とのことで、モチーフや構図を打ち合わせ。
少女は14歳くらいで、「どちらかといえば精霊のような非日常的な雰囲気の少女」、後期ムンクのイメージだそう。
また、プルーストがとてもお好きで、<失われた時を求めて>の中に出てくるマドレーヌと紅茶のイメージで、できれば黄色・オレンジ系の色調をご希望とのこと。

そこで私が提案したのは、
ノートルダムの斜め後ろからの眺めを中心にパリの街並を遠景に据え、その手前に橋を渡っていく少女の姿。
さらに近景に、ノートルダムのガーゴイルたちが肩を寄せ合って少女を眺めている。
その視線を感じて少女がこちらを振り返りかけたところ。
そのようすを、プルーストの文体のような緻密な画風で。
という構想。

これでOKをいただいたので、下描きにとりかかる。
あまりやったことのないタイプのイラストで、ちょっと、モチーフの配置が難しく、何度か描き直ししました。

基本、写真からの描き起こしですが、ほとんど、自分で過去に撮った写真から。
じっさいそこにいて、何がどうなっていたか見ていたっていうのは強い。
だから自分的ベストなアングルで撮っているし。

   ***



下描きが仕上がるのに一週間弱。
初仕事ということで気合が入りすぎ、ちょっと凝りすぎたかも。
実質、風景画3枚という感じ、ちょっとごちゃごちゃした構図になってしまった。
説得力ある構図とするために、複数のモチーフを調和させてみせるのは色の役目だ。それはあとで。

作業しながら感じたのは、いかに「自分の」作品とするか、というところがポイントな気がする。
クライアントさんは全面的に信頼してくれてるけど、それでも注文仕事であって、さいしょに自分のなかにイデーがあって描くわけじゃないから。
核のところを、つねに人に確かめなくてはいけない。
それがちょっとキツイ…ちょっとだけね。
仕事でやる限りは常にそういうのはあるのだろうな。



ペン入れに、さらに二日弱。
いちばんさいごに残した、豆粒ほどの、でも実はこの絵の主人公である少女も完了、画竜点睛という感じ。
めっちゃ細かいディテールが多いので、すごい目が疲れた。
ちょっとこまかく描きこみすぎたかも。。

ノートルダムは大好きだったけど、パリに何年も住みながら、
いままでパリの建物はただ写真を撮るだけで、描こうと思ったことはなかった。
なんかもう、そこにあるだけで完璧で、このうえ私が介入して何かをつくろうとは思わなかった。

でも、やってみて思ったのは、建造物を描くのって勉強になるな。
たとえ写真から描き起こすだけでも、ほぼ単なるトレース作業であっても。
ただ写真撮るだけよりぜんぜん。
その建物の魂を、ちょっぴりよりよく知った気もちになる。

   ***

ペン入れが終了したのち、近所のOffice Depotへ行って、濃さを変えて何枚かコピーをとる。
色は直接原画にではなく、こうして、濃い目に打ち出したコピーに塗ることが多い。
そのほうが画面が締まる感じがするし、あとトナーだと、インクじゃないから上からぐりぐり強く塗っても滲まないのだ。
あと、なんかしっくりしなくて一からやり直したいという場合にもよい。

しかしこちらのOffice Depotは自分でコピーできなくて、カウンターの向こうにあるコピー機で店員さんにコピーしてもらうシステム。
濃さを変えるだけでコピー代じたいの何倍もの手数料がかかるのだ。
これはほんとにやめてほしい。
それに今回はディテールが繊細過ぎて、どの階調でもどこかしら掠れてるか潰れてるか。
正直どれもダメな気がした…
これはコピー機の問題というより私のほうの問題でもある。
つぎからペン入れはもっとシンプルに、くっきりと入れるようにしよう。

関係ないけど、お客さんがいっぱいで密でイヤだったなー。。

とりあえず今回は… 強い部分は強すぎるような気もするけど、微妙なディテールをとりあえずいちばん掬えている、いっちばん濃いバージョンを選んで色を入れることにした。

一日作業してとりあえずすべて塗り終えたが、納得いく仕上がりではない。
ひと晩寝かせて、ためつすがめつ、手直ししていく。
いつもだいたい、そんな感じ。
納得いくまで、ようすを見ながら、重ねて重ねて。



   ***

ところで、Office Depotでは、ペン入れした原画をスキャンしてUSBに入れてもらうというのも頼んでいた。
しかし、たしかにスキャンはしてくれたのだが、家に帰って確かめたらUSBにデータが入っていないことが判明。
いや別に、店員のお姉さんに悪気はないし、単なる手違いだったと思うよ。
でも、そのために密な店内でなるだけ息をしないようにして待っていたのに。
足を運んだ手間は何だったのか。力抜けた…。

実はそれまでも、パリの家で使うスキャナがひとつほしいなとずっと思っていた。
スキャナがなくて不便な場面がたくさんあったの。
つくばの家で使ってるのは複合機だから、こっちに持ってくるのは難しかった。
それで今回、怒った勢いで、というか、この機会を逃すとまた長くかかりそうなので、Office Depotへ行った翌日、朝イチでネットでスキャナを注文。
80ユーロほどのCannonのシンプルなもの。
仕様書を読んだ限りではなかなか画質もいいことになっていた。
その翌日、さっそく到着。話が早い。

しかし、さっそくDVDでソフトをインストールし、塗りを仕上げたばかりのイラストをスキャンしてみると…
「うわぁ全然別ものじゃん」というショック。
黄色いトーンがほとんど反映されていなくて、オレンジの部分は赤みたいになっちゃってる…。
Photoshopで取り込んで、手動で手直ししてなんとか原画に近づけてみる。
めっちゃ手間がかかる。
あ、Photoshopというのは画像編集ソフトです。

いちおうそれで、頼まれていた文字も入れて、いくつか色やフォントを変えたバージョンをクライアントさんに送る。
そしたら、もっと飾り文字みたいのをご希望ということで、イメージに合いそうな凝ったフォントをネットで探した。
これは手間かかったけれど、勉強になった。
ずばらしいフォントがたくさん、フリーでダウンロードできるのね。
そして、ただダウンロードしてインストールするだけで、自動的にPhotoshopで使えるようになる。
これ、やってみると感動します。

あと、フォントをかっこよく掠れさせることはできるかなと調べたら、これも分かった
ラスタライズして消しゴム機能で、少し粗目のブラシにしてやるといい感じに掠れる。
いろいろ勉強になります。
先日、自分の作品に電子署名を入れるのに、フォントの変形のさせ方とかをいろいろ研究したのも役に立った。

   ***

そんな感じにだいたい仕上がったのですが、スキャナの仕上がりがどうしても納得いかなかったので、いまいちどOffice Depotでスキャンし直してもらって、比べてみようと思い立ち。
日を改めて足を運び、先日の件を説明してスキャンし直してもらった。もちろん無料で。いちおうレシートを持っていったけど、見せろとも言われなかった。店員さん、いい人だったわ。
今回はその場でUSBの中身を見て、データがちゃんと入ってることを確認した。

そして、家に帰って自分のスキャナでスキャンしたバージョンと比べてみると、差が歴然。
黄色いトーンもちゃんと忠実に出ているほか、線画のラインもこのほうがよく再現できているようだ。
はぁ… 結局Office Depotには勝てないのか。。

ただ、端っこが少し切れてしまっていてね。
自分でスキャンしたバージョンと接ぎ合わせて復活させたけど、それでまた手間がかかった。
これは自分の問題だな。
端っこぎりぎりまで描いたらスキャンしたときに切れてしまうのは分かっているのだから、端っこまで描かないようにしないといけないのだよ。
どうしてもめいっぱい描きこみたくなってしまって。

というわけで…
今後こういうことを数をこなしていくとなると、方法論をシステマチックに構築しておかないと。
毎回、<黄色問題>に煩わされるのは困る。
かといって毎回Office Depotに何度も足を運ぶのも勘弁してほしい。
またタブレット購入を検討するか…。(昔は使っていた)
これは今後の課題。。

とりあえず、完成!!(これは文字入れしていないバージョン。)



  ***

いろいろ気づきや問題点があったけれど、いちばんはやはり。

前のところでも書いたけど、注文仕事でも、<自分の作品>としていく作業が必要。
コミットしていくというか。
愛せないと、ほんとには描けないからね。
必然性がないと。
物語を、創造しなくちゃいけない。

今回はラッキーにも、好きな場所を好きな構図で描かせてもらえたけど。
それでもただ写真から写し取るだけでは創造とは言わないから
だから… 今回の創造は、組み合わせと配置がすべて。
視線の交錯を生み出すための。

ガーゴイルたちが、みんなして遠くの少女を眺めている。
たぶん彼女に、少し人間離れした、自分たちと同じ異界に半分属しているようなものを感じ取ったから。
あれは誰だ、と思って見ている。
少女のほうもその視線を感じて、いまにも振り返ろうとしている…。

モチーフの選択と配置にのみオリジナリティーが。
コラージュみたいなものね。視線がぐわーっと遠くの一点に収斂していく。

そしてまた、大きく言えば、大好きだった、失われてしまったノートルダムへのオマージュでもある。

それにしても絵を描くって、毎回が探検で、発見で、地図のない旅だな。
最終的にはちゃんと仕上がるって分かってるのだけど、その途上はいつもね。
英語を教えるみたいにいつでも迷いなくオートマティックに、ってわけにはいかない。

いや、英語を教えるのだって常によりよいやり方を探してはいますよ。
でも、少なくとも文法事項とか単語の意味とかは毎回変わったりしないでしょう。
絵においては、毎回文法が変わるのですよ。
そこに何色を置くのが正しいのかっていうのは、やってみるまで分からない。

だから後戻りできるっていうのがすごく大事。
だからアナログの色鉛筆が好き。
いちどに大きな平面を塗るのには適していなくて手間がかかるけど。。
消しゴムで簡単に消えるし
消しゴムで消したとこにまた味が出るので。

今回は注文仕事ということもあり、あまり主観を入れない方がいいかなと思って、なるだけ写真に忠実に描きこんだ。
色調のトーンは変えたけど。。
でも、ラインに関しては、写真に忠実なあまりちょっと正確すぎて面白みに欠けたかも。。
設計図を引こうって話じゃないのだから。
歪みや主観こそがアートなのにね。
そのあたりのバランスのとり方も、今後の課題かも。

   ***

ところで、プルーストのような緻密な感じは画風で表現できても、マドレーヌと紅茶の感じを風景画で表現するのは難しいなぁ…と思っていたのです。
Photoshopでいろいろいじって遊んでいたら、偶然、面白いものができた。
これはまさに、マドレーヌと紅茶のこっくりと甘い感じ!
クライアントさんも気に入っていたバージョンです。



イメージ>色調補正>グラデーションだったかな、そのなかの一バージョンです。
さらに、背景色と描画色を変えることで色々な効果が得られることが判明。

 

私がいいなと思ったバージョン。
ブルー系のは、カーテンとかクッションカバーの柄によくないですか?
テキスタイルのデザインをする人ってこういうふうに作っているに違いないw
黒に紫のは、スクラッチボードみたい。

長年使っていたPhotoshopにこんな機能を発見したのは、自分ちの屋根裏部屋を探検するみたいな楽しさ。
思わぬ副産物でした。

とりあえず初回、クライアントさんにも満足していただけたし、よかった!
今後もガンガン手を挙げていきますよ。
それとともに、ポートフォリオを整備する過程で自分の過去の作品をきちんと整理して管理するシステムを作り直すことにもなって、一石二鳥。

私の<ココナラ>のページはこちら。
https://coconala.com/users/1974584
現在、イラストと翻訳の仕事をお受けしています。
ポートフォリオはこちらです。眺めるだけでもなかなか楽しいと思いますよ。よかったら。
https://coconala.com/users/1974584/portfolios?anchor=portfolios























*************************************************