2009年06月25日

初演備忘・衣裳、道具類

 そうそう。
 ミシン、調達しなくては。
 手縫いで衣裳つくるのは無謀だと分かった。

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 外見てすごく重要だと思うのだ。
 どんなに台詞回しの巧みな、玄人はだしの舞台でも、西洋物なのに平気で黒髪のまま、ろくに舞台化粧もなしに演じていたりして、役を作りこむこだわりをあまり感じられない役者だと、どうも私は興ざめしてしまう。
 ライヴのステージなんかでも、音楽的にはすばらしいのに、着てるものがあまりにふつうだったり無頓着だったりすると、もうちょっと何とかすればいいのにと思ってしまう。
 見た目を飾るっていうと響きが悪いけど、見る人を楽しませることも大事だと思うのよ。
 それは素人でもプロでも、ひとしくそうだと思う。

 あと、今回思ったのは、衣裳は先につくった方がいい。 
 演出をする私の頭の中にはちゃんとイメージができあがっているのだけど、稽古にくる団員さんの目に映るのは無味乾燥な公民館の空間だけなわけだ。
 それで想像力を働かせて演技しろといってもずいぶん酷だろう。
 衣裳を着て稽古したほうが、役者もだんぜん役に入り込みやすいに違いない。
 マリア・カラスは、練習中は役作りのために家でも舞台衣装をつけていたそうだ。

●水の精の衣裳

 水の精の衣裳は、まあまあいい感じに、古代っぽく妖精的にまとまっていたと思う。
 うちにあった本の挿絵とかを参考にデザインした。
 これはつくる自体よりもデザインを考えるのに時間がかかったが、結果的には、すごくシンプルなつくり方を編み出した。
 縫う自体より布地や色あいを決めるのに苦労したかもしれない。
 縫うところはそんなに多くないので大方私が縫い、わきにマジックテープをとめつけるのは団員の女性が引き受けてくださった。

 丈は長めの方が雰囲気が出るので長めに仕立てたが、つくってからじっさいリハやってみて、踊るとなるとすそを引きずってはつまづいて転んでしまう恐れがあることが判明。それぞれにすそをたぐったり、ウェストのところでだぶついてしまったり、結果あまり美しくなかった。

 袖なしのワンショルダーで三月の野外公演にはかなり寒く、各自素肌っぽい感じの肌着を用意して着てもらったが、ひとによっては体にぴったり合ってなくてかなりかっこ悪かった。

●修道士関係

 修道衣は水の精よりはるかに地味なのだけど、実はこっちのほうがよほど大変。
 まず、デザインがよく分からなくて、とくに首まわりのフードのへん。色々資料を調べたのだけど、絵でも彫刻でも、どうなってるかよく分からないんだ。
 結局、ゴールウェイで買った Irish Fairy Tales という本の中に、修道士が歩いてるところを横から描いた挿絵があって、そのへんを参考にしてつくった。
 修道衣4着、修道院長の服、修道院の守衛の服。

 地味なのに大変なのは、縫うところがいっぱいあったからだ。
 私は修道衣を1着だけつくった。手縫いで13時間くらいかかった。疲れた~。
 ほかの団員さんに手伝ってもらうのにつくり方を説明する必要があるので説明用のイラストを作成。
 あとはほかの人たちにつくっていただいた。
 じっさい、四方八方にやることが山ほどあって、自分ではとてもやってられなかった。
 ひとによっては細かいところを何度も説明しなくてはならなくて大変だったけど。
 同じく手縫いで一着仕上げてくださった人がいた。大変だったろう!
 団員じゃないのに見かねて手伝ってくださった方もいた。
 これは以後、こういうことがないようにしなきゃ。

 さいしょ、わきのところは耳でほつれる心配はないし、垂れてるだけだから縫うこともないだろうと思って縫わないで放っておいたら、野外公演で風にバタバタあおられてめくれ上がってしまい、失敗だった。
 フードつくらなきゃと思いつつなかなか手が廻らず、やっと当日、5人分のフードをもってってそれぞれに安全ピンでとめつける。わきのところもとめつける。
 それでもバタバタしてヘリが出てきてしまったり、かっこわるかった。

 アマナンの修道衣だけ、胸に白い十字架がついてる。
 セリフの中に「胸に十字架のしるしをつけてたわ」とかいうところがあるからで、アマナン君が自分でつけてくれたのだ。こまかいところまで気のいく人なので助かる。
 私自身はそこまで気が回ってなかった。
 次やるときはできたらほかのにもつけたいと思っている。

 修道院長の服は、ミサのときの神父さんの式服を観察して参考にした。
 ほんとは白衣の上から、白いケープをかぶった上に祭祀用の袈裟みたいのを垂らすのだけれど、つくるのがまにあわなくて、ケープは省略。袈裟もへりを縫ってるひまがなくて切りっぱなしで公演にのぞむ。

  終わってみての反省点として、なかなか難しいことではあるんだけど、やっぱり、できるだけ全員の状態を、上演前に自分の目でチェックしないといけないなぁ、と思った。
 襟もなにもめちゃくちゃな状態で出てこられて、あっちゃーと思ったり。
 でも、彼らの落ち度でもないのだ。
 何しろ楽屋に鏡もなくて、というか楽屋自体がなくて、自分の姿をチェックできなかったのだから。

 それと、できたら終了後に写真とるときも、いちど自分で全員の状態を見わたして確認しないといけないなぁ、というのはあとからつくづく思った。
 鏡のないところでは、私が全員の鏡にならないと。

●かつら、お面

 かつらは賛否両論あったんだけど、まぁ、使ってよかったと思ってる。
 団員さんがネットで見つけてくれた都内のお店で、既製のものを購入。
 衣裳との組み合わせ、舞台映え、全体との調和など考え、二回ほど通って凝りに凝って選ぶ。
 リハやってみてどうしても違和感があって、結局使わなかったものもある。

 目立つのは青やピンクの水の精の髪の方が目立ったと思うけど、いちばんのヒットはアマナン君だろう。
 主人公で重要な役なので、これもすごい、時間かけて役のイメージを考えながら選んだのだけど、つけてもらったらあまりにはまってるので、私だけでなくみんなが驚いた。
 少し長めの、くせのあるタイプで、色はオレンジゴールド。
 もともと色白だし、キレイな顔だちだからだろう、なんか異様に似合っていた。
 ふつうにそれつけて生活したら、と勧めてるのだけど、実行はしていないようだ。笑)

 ほかの役者さんたちもそれなりに似合ってたと思う。
 子役で紫をつけてもらった子は、さいしょは白をつけてもらってた。
 これがまた、びっくりするくらい似合ってた。
 結局紫にしてもらったのは、私より彼女の方が舞台に出る場面が多くて、色味のあるものを出したかったからだ。

 エルダとミリュウの緑と黄緑の組み合わせもよかったと思う。
 あのきつい黄緑を手に取るのはなかなか勇気が要ったのだけど、あの色をもってきた方がいいと思った。
 水の精の方も、修道士たちの方も、お店で色見本を借りて組み合わせを比べ、みんなで出たときの視覚的な効果を考えた。

 修道院長の禿げ頭とひげだけは、既製のものが手に入らなくて手づくり。
 これもせっぱつまって、できあがったのが前日。
 とにかく、どうやってつくったらいいか分からなくて悩んだ。
 近所のおじいさんが散歩してるのを追い抜くときに、じっくり観察して禿げ頭がどんなふうになってるのか研究したり。
 (ご本人は、自分の頭がよもやそんな目的で利用されているとは夢にもご存じありますまい。)
 いろんな人の頭を観察して、一般的な禿げ方を研究した。
 で、種明かししちゃうと、水泳帽に肉色の布テープをぴったりと貼って、白髪のところは接着剤を塗って、ちぎってふわふわにした脱脂綿を貼りつけた。
 ひげは、白い布を細長い三角形に切って、やはり接着剤を一面に塗ってちぎった脱脂綿を貼りつけ、両側に耳にかける輪っかを白いゴムひもで縫いつけた。

 お面も賛否両論。
 古代劇っぽい雰囲気を出したかったし、仮面劇ってあまりないので目を引いた面はあると思う。
さいしょ、水の精のほうは睡蓮の花をかたどったお面でやろうかと思ってたのだけど、 結局ふつうに人の顔のお面になった。
 どういう経緯だったかは忘れた。
 基本、ボール紙と薄い肌色の色紙で作成。
 とりあえず今回はあれでよかったと思う反面、表情をつけられないとか、声を出しにくいとかいろいろ難点もあり。
 あった方が役に入り込みやすいという人もいれば、いやがってた人もいた。
 いちどちゃんと舞台化粧して、お面なしでやってみるのもいいかもしれない。

●小道具類

 さいしょの場面で使うヴァレリアンの花は、団員の女性がピンクの毛糸と針金でつくってくださった。
 器用な人なのでほかの人の分までお面作ってくれたり、なにかとこまごまやってくださって。

 修道士たちが畑仕事で使う農具類は、団員さんたちで調達。
 じっさい使ってるものを提供してくれた人もあれば、わざわざ購入してくれた人もある。

 守衛さんの槍は、やはり前日に応急で作成。
 細い円材にボール紙の槍先を麻ひもでぐるぐる巻いてつける。
 これはつくるより、運ぶ方が大変だった。当日、バイクでほかのものといっしょに会場へ運んだので。
 槍先を上にして運んでるといかんせん怪しいと思って、下にして、スクーターの風よけのところで隠して、ただの棒ですという顔をして運ぶ。

 賛美歌の歌詞を書いてある巻物は、ラップの芯を使って作成。
 もうちょっと、古めかしい羊皮紙の巻物のように見えるよう凝りたかったのだが、時間がなかった。

 死体を発見する場面で使うカンテラは、イメージに合ったアンティークなものをホームセンターで見つけて購入。
 でも、オイル式だったので、舞台で使えるよう、守衛役の団員さんが中に豆電球と電池を仕込んでくれた。
 火を灯しているように見えるよう、わざわざやわらかい黄色系の電球を選んでくれたそうだ。
 一度だけやった夜公演で電球をつけて使って、すごくいい感じだったのだけれど、昼公演では電球をつけなかったので光の感じをお目にかけられなかった。つけてたら少しは見えたのじゃないかと思うのだけれど、残念。

 あと、エルダが葬列に泣きながらついてくるときにかぶるシーツ。

 演目とか情報を書き込んだ告知用のおおきな立て看板をつくりたかったのだが、時間もなかったし、運搬方法もなくてあまり現実的じゃないので断念。
 とりあえず厚紙に手書きで記しておいた。ないよりはましだろう。

 あと、アンケート用紙と筆記用具。

●大道具

 はじめは修道院のセットをつくれたらいいと思って、ホームセンターの資材売り場とかをうろうろして案を練っていた。材木と発布スチロール板でつくろうかなと思っていた。
 けれど、つくるのはいいとして、使うまでどこに置いておくのかとか、会場までどうやって運ぶのかとかいう問題があり、結局セットはやめて背景で表現することにしたわけ。
 背景幕なら比較的コンパクトにたためて、バイクで運べるから。
 
 さいしよはけっこう色々よけいなことを考えてて、岸辺の木立を再現したかったので、ホームセンターとタイアップして、宣伝に使ってもらう代わりに園芸コーナーの庭木を借り受けられないかなぁとか。
 実現しないとしても話をもってってみたら面白かっただろうと思うのだけど、ほかにもやることがたくさんあって、今回はそこまで手が回らず。

 礼拝堂の雰囲気を出すために、デコラティヴな感じのアルターとか、ステンドグラスの窓とかを、ほんとは調達したかった。時間的金銭的余裕もないし、運搬手段もなかったけど。

 エルダが身を隠していた茂みのつくりものは、うちにあったイーゼルに、タイミングよくもとの職場から譲り受けたイミテーションの植物を配して作成。
 イーゼルをバイクで運んだのは無謀だった。
 作成後預かってもらってた団員さんには、公演当日、かなりの距離を持って歩いてもらってしまって、悪いことをした。しかも、野外公演では、強風で吹っ飛ばされてしまって使えなかった日もあるし。

 エルダとアマナンのために椅子がふたつ必要で、近くの市民活動センターから借りる手はずを整えていたのだが、当日になって団員さんが木の台をふたつ持ってきてくれて、そっちの方がイメージに合っていたので、そっちを使用。

 何といっても傑作はアマナン君制作の棺おけだろう。
 凝り性なこの人の性格が出てて、おかげですごい、りっぱな葬式になった。
 ずいぶん時間かかってることと思う。
 木目の外装に、金色の十字架がついて、おまけに白いユリとばらの花まで飾られてる。
 金色の十字架は私の注文だったので、当日、自分で描くつもりで金色のスプレーをもってったのだけど、見たらすでについててびっくりした。
 しかも彼はこれを自転車で運んできたのだ。
 組み立て式で、ダンボールを3つつなげてできてるそうだ。
 公演後、それをまた分解して、自転車の前と後ろに積んで、おまけに鍬まで積んで帰ってく後ろ姿を見て感動してしまった。

●課題

 衣裳係とか道具係とか、ほんと担当の人がほしい。
 正直、とてもひとつひとつやってる余裕ない。
 こういうの割り振り分担とか、ほんと難しい。

 立ち上げの前にいくつか劇団を見学に行って、そんな話も聞いたのだけど、どこ行っても「自分の使う小道具は自分でつくる」というのが基本らしかったので、うちもそうあるべきだと思ってたし、そう話してた。
 けれどもじっさいはほとんど何もできあがらないまま、日にちばかり過ぎて。
 こりゃもう自分でつくらないとだめだ、と観念したのが直前になってからで。
 要するに自分の諦め悪いのがいけなかった。

 棺おけとか団員さんがつくってくれたのは別として、今回のだいたいのパターンは、
 それぞれ使う役の人に「こんな感じで」とイメージを説明する→
「どうやってつくったらいいか分からない」「できあがってから『それじゃだめ』とか言われても困る」とか言われ→
「分かったよ、じゃあ私がつくるよ」ということになり→
 疲れ果てる→
 最悪、当日、忘れてこられる。
 とかそんな感じ。

 けどやっぱり本来は自分でつくるべきだろう。
 とりあえず自分でつくって私のところに持ってきて、ダメ出しされたらそこで凹んでくさらないでまた作り直すべきじゃないかしら。
 そんなふうに自分で苦労してつくった小道具なら、まさか当日忘れたりしないだろう。
 それがまっとうな劇団のカタチじゃないかしら。

 でも今は、団員さんにお給料払ってるわけでもないからそこまで要求できない。
 っていうか、してもやってくれるはずもない。
 それぞれの性格とかモチベーションにもよるんだけど。
 役者やるだけで精一杯、っていうか、役しかやる気がない、っていう人もいてさ・・・。
 それでいいのか、ほかのがんばって協力してくれてる人に失礼じゃないか、がんばってくれてる人たちのモチベーションを下げないでくれよ、ってほんとは言いたい。
 人手不足のアマチュア劇団の辛いところ。・・・

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Posted by 中島迂生 at 03:49│Comments(0)初演備忘
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