2018年09月07日

政治とスキャンダルと。~2017大統領選を振り返る~


先生方とお話ししていたときに、マクロンとか、スキャンダルは問題にならないの?
って聞かれたことがありました。
私、このときだけはちょっと、一瞬ポカンとしてしまった。
マクロンの名とスキャンダルというコトバが結びつかなくて。
え、彼の何がスキャンダル? なんか新しい話題があったっけ?…
実はいまでもあまりぴんと来ない。

奥さんのブリジットとのなれそめが、もとい生徒と高校教師の関係だったっていうのが?
ブリジットが当時結婚して子供もいたっていうのが?
あー、まぁ、そうかー。
でも、大方のフランス人にとって、あれはむしろ美談でしかないよね。
っていうか、私もてっきりそう思っていたのだけど… あれ、違ったの?

だって、考えてもみてくださいな。
高校生のときの恋の相手と「ぜったい結婚する!」と宣言して、
色んな障害を乗り越えてほんとに結婚したばかりか、
なんと今でもいっしょにいるのですよ。
すごいよね、よく飽きないなー。私にはとても、真似できないわ。
いや、これは皮肉ではありません! 褒めてるのです!!
これが<青い麦>みたいな一時的な関係で終わっていたら、よくある話ですけど。
ここまで来たらほんとに、見上げたものです。

そしてまた、大統領選に、それをうまく活用しましたよね。
演説の場には、必ず二人で現れて、仲のよさをアピールしてね。
おかげで中高年層の女性から圧倒的な支持を得て、大統領になれたのだものね。
あ、いや、それだけが要因ではなかったけれどね。
政治的な中庸路線とか、適切な移民政策とか、色々ありましたけど。
でもとにかく、あれは話題性であり格好のトピックではありこそすれ、
決してスキャンダルとは思われてなかったのではないかな。

ただ、そうやってプライベートを売りにしてしまったから、
いろいろきつい部分はあるだろうな、とは思います。
任期中に別れたりしたら支持率も下がるだろうから、
うっかり喧嘩もできなさそう。そのへんは大変だろうな…。

ともあれ、2017年の大統領選で、誰もが最大のスキャンダルとして思い出すのは、
共和党のフランソワ・フィヨンが身内を不正雇用して公金を流していた問題であろう。
あと、国民戦線のマリーヌ・ルペンが架空雇用で欧州議会に告発されたやつとか。
うーん、やっぱり国民性として、お金のことには手厳しいけど(税金ですからね)、
恋愛についてはわりと寛容というか、気にしないというか…
なんか、個人の自由だと思ってる感じかな。

というか、マクロンさん、ふつうに結婚しているというだけですでに、
私の中ではけっこう保守的なイメージなのですがね。
だって、オランドさんは子供4人くらいいるけど事実婚で、結婚してないし、
サルコジは任期中に離婚したし。
大統領からしてそんな感じなので、この国の人たち、
みんな自分の欲望に忠実で、けっこう自由にやってるイメージです。

ソルボンヌの先生のひとりなんか、「いま、ボクは4度目の結婚だよ」って普通に言ってたし。
けっこうなお年を召して、つるっぱげだし、特にそれほどモテそうな感じはしなかったけれどな。
文学の先生で、講義は分かりやすかったですけどね。
「毎回、生徒と結婚してるよ」と言っていた。
「よくそんなにモテるなー」とは思ったが、特にそれが問題だと思わなかった私って、
あれ、やっぱり感覚ずれてる?

ともあれ、大統領選、楽しかったなー。
私が「楽しかった」っていうのも変ですけど、あの期間の白熱した空気には、
なにかほんとに独特なものがありました。
毎日のように、次から次へと新しい展開があって。
なんというか、月9のドラマが、リアルで毎日展開していく感じ。
それくらいの密度の濃さと、波乱万丈っぷりでした。

フランソワ・フィヨンなんか、最有力候補と目されていたのに、
次々スキャンダルが明るみに出て、あっというまに支持率が急落してしまって。
それでも、開き直って「行くところまで(=ジュスコブ)行く!」と宣言して、
たちまち「ジュスコブディスト」っていう新語が生まれたりして、面白かったな。
彼こそ「スキャンダルのデパート」っていう感じで、ちょっとかわいそうなくらいだった。
あれは、ぜったい、彼が最有力候補だったからあれだけ突っ込まれたんだと思うわ。
ほかの候補者だって、探せば同じくらいのネタはあったはず。

当時、私は語学学校で政治の授業をとっていて、
毎週、先生がその週に起こったことをこまかく解説してくれました。
文法の授業でも、毎日のように話題になっていたし。
でもやっぱり、政治の授業がいちばん面白かったな。いちばん楽しみだった。
政治の授業がいちばん楽しみなんて、そんな日がこの私に来ようとは。
人生、ほんとに分かりません。

でも、フランス人が政治好きなの、よく分かった!
だってほんとに面白いのだもの。
つまりは人間ドラマなのです。
投票日が近づいてくると、スーパーで主婦たちが野菜買いながら
「誰に投票する?」って話題でもちきりなのです。
道を歩いてても、みんな選挙の話してるし。
(ついでに、街じゅうのマリーヌ・ルペンのポスターには、もれなくヒトラーの口髭が
描き加えられているし…)

やっぱり思うのはね。
国の党首を選ぶのが、直接民主制って正しい!!
だからあれほどまでに盛り上がるのですよ。
私、子どものころ、日本では首相を選ぶのが直接じゃないって習って、
「はあ?!」って感じで、相当な違和感でしたもの。

二回めの決選投票では、ルペンとマクロンの一騎打ちを、
フランス中が息を呑んで見守っていた。
あのときほど、投票権がほしいと思ったことはありません。
極右のルペンが政権を執ったら、我々移民なんか真っ先に追い出されますもの。
投票日の前日あたりには、シャンゼリゼで爆発騒ぎなんかもあって、
さいごまで波乱つづきでした。

それでも、ルペンがああいう父親のもとに生まれて色々苦労してきたのも知ってるし、
国民戦線が、色んな社会的なもやもやの捌け口みたいになってる部分もあって、
彼女がそれをひとりで受けて立っているようなところがあるのも感じている。
だからやっぱり、100%キライにはなれなかったな。

そんなこんなで、あの頃、フランスの政界については一時的に、
ちょっぴり詳しくなりました。いまはもう忘れちゃったけどなー。
映画学科に入ったら、だれも政治の話なんかしないんだもの。
あの熱狂、ちょっと懐かしい。…




















Posted by 中島迂生 at 00:32│Comments(0)
 
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