2011年12月25日

湖底の都 初演備忘Ⅱ

●音楽/音源
 
・テーマ曲
冒頭部でテーマ曲を、ギターの伴奏でみんなで合唱、この部分は吹きこみ音源なし。
これは今回新しい要素のひとつ。
せっかくぜんぶ自分で書いてるのだしほかではいつもライヴやってるのだから、ライヴの要素も取り入れたいと思ってようやく実現できた。
けど、今回のお客さんは音楽にはあんまり興味なかったのかな。
セリフが音源込みだったことは色んな人が批判してたけど、曲については誰も一言も言ってなかった。
ふさわしいお客さんを開拓していかないとね。

テーマ曲はありふれたコード構成だけど、シンプルで悪くない。
苦労してたくさんのトラックを重ねて、音源も味のある仕上がりになってる。
ボーカル+ギターの元トラックに、コーラスを3トラックほど、ギターのストロークを別に1トラック、プラス、シンセのストリングスとコーラスを1トラックずつ重ねてる。

深緑だね、曲調が。Eが目立ってるから。
Eって深緑じゃない?

これまで、<エインガス>と<石垣>のテーマ曲がアコでブンチャッチャみたいなのだったから、今回はもうちょっと普通に聴ける感じに、自分がふだんライヴでやってるロックやポップスに近い感じにしようと思って。
今までよりもっと力強さが、パンチの効いた感じがほしいなと思って、そんな感じにした。
それと、今までがんばって日本語で書いてきたのだけど、やっぱ詞は英語のほうが書きやすい。

・ミーズとロンデナントの別れのダンスの曲
今回、気に入ってる曲のひとつ。
場面にとても合っていて聴きやすいのだけど、実はふしぎな拍子の曲で、Aメロが基本4分の3なのだけど、ところどころ変なところで伸びてるし、Bメロは8分の6なのかな? しかも、AメロとBメロを同じテンポで弾くと明らかに変なので、それぞれでテンポを変えてるのだ。
あぁ、こういう面白い曲が降ってくるようになったんだなと思ってうれしかった。

さいしょはシンセのチェロの音で入れたのだけど、音源を人に聴いてもらったら、一発で「シンセの音だね」と言われてしまい、・・・やっぱりちゃちだからやめようと思って、エレピで、パイプオルガンの音で入れ直した。
エレピだとチェロの音がなくて、あったなかでいちばんイメージに合っていたのがパイプオルガンの音だったのだ。
ほんとは、あの時代にはまだパイプオルガンなかったはずなんだけど。

・鳥のさえずり
これだけ全部オリジナルでがんばってるのに、ネットで探してくるっていうのも芸がないなと思って、ほんとはロビンかブラックバードの声を吹き込みに、ちょっとイギリスあたりまで行こうかと思ったのだけど、なかなかそうもいかず。
発想を換えて、シンセのフルートの音で、BGMのひとつの冒頭部分のバリエーションを。
時間がなかったので直接シンセからパソコンにつないで、その場で弾いて入れた。
だから弾いてるときは自分の音が聞こえない状態だった。

・その他
曲はシンプルなほうがいいけど、凡庸ではダメね。
今回は、ほかは凡庸なのが多かった。
ミーズとロンデナントのさいしょのダンスの曲など、シーンには合ってると思うけど、何の目新しさもなく。
BGMに使ったギターインストも、Bメロで転調するのでレコーディングがえらく大変だったんだけど、おおかたあんまり耳にひっかからないよね。
風景画の映像のときに使ったピアノ曲は、あれはさいしょにダーッと降ってきた10曲くらいのなかに合うようなのがなかったので、わりと直前になって急遽書いた。
ダンス曲のほうと似てて、よく間違えてこっちで踊ってしまったりしてた。
あんなに美しい風景には、もっといい曲があるはずだと思うのだけど・・・
いいのが降ってきたら足すかも。

●ナレーション、セリフなど

音源込みだったことや、セリフを同じ人がぜんぶしゃべってたこと、ノイズが入ってたことなどに批判が多かった。
これについては、こういう事情があったんだよ・・・と弁明したい気もちと、・・・あたしが思うことはやっぱりほかの人たちも思うんだなぁ、で、人が聴いていいと思わなかったらそれまでだよなぁ、と思う気もちと、複雑。
これについては、あまり詳しく書くと愚痴になるのでやめる。
今後の課題としてちょっと考える。

ひとつ言うとすれば、セリフをしゃべるのは、別にいいんだわ。
あたし以外はみんな、ふつうに覚えて喋れる人たちだし、あとはあたしが頑張ればすむ話だから。
けど、ナレーションとかBGMの頭出しを、誰がやるのよ? という問題。

●映像/機器関係

映像を取り入れたのが、今回最大の新しい要素。
背景にプロジェクタで絵を映すのは、もう旗揚げのときからずっとやりたかったことなので、大きく一歩可能性が開けた。
ただ、方法論を考えたり、編集作業とか、DVD作成とか、現場では思わぬトラブルが次々起こるし、ほんと大変だったけど。

コロフィンの絵をあらたに8枚ばかり、色塗るの大変だったな。前も書いたけど。
気合いを入れてかからないと終わらないと思って、1週間くらいの突貫工事で終わらせた。
線画だけならまだいいんだけど、色を塗るのは昔から、めんどくさくてあまり好きじゃない。
塗り絵って信じられない。
自分の絵さえ、色塗るのめんどくさいのに、なんで他人の絵に色塗んなきゃいけないのって思うよ。

編集に使ったのは、ビデオスタジオvol3。
多機能だけどなかなかクセが強くてやっかい。マニュアルがものすごく長くて、やりたいことのやり方を見つけ出すのが大変。

よく使った機能は、フィルタでズーム&パン。
最終的にどの部分へ、どのくらいの大きさでどれくらいの時間をかけてズームするか、カスタムできるのね。
ところが、それをやると指定してないのに勝手に左右にパンもしてしまって、パン機能のチェックを外すと、カスタムした内容もゼロにされてしまう。
あれ、ひどいよな。
とりあえず勝手にパンされるのには納得できなかったので、部分指定のカスタムはあきらめた。
そうすると自動的に、まっすぐど真ん中へズームしていくことになる。

あと納得できなかったのが、縦長の画像をズームしていくと、表示できる横幅もだんだん広くなっていってしかるべきだと思うのに、ならないんだわ。
表示される横幅は同じままで、ただその狭いなかでズームされていくだけなの。
そこで、フォトショで画像の上下を切り落として3分の2バージョン、3分の1バージョンなど別につくって、グラデーションで表示して、横幅がだんだん広くなっていくように見えるように工夫した。
自然につながって見えるように、各クリップのズームぐあいも調節して。
縦長の画像はいくつかあったので、ずいぶん手間がかかった。

そうそう、そしてそれをやってるとき、急にJpeg画像をビデオスタジオに読みこめないという怪奇現象が発生。
論理的にそんなわけないんだが、そういうことがたまに起こる。
治ったあとも、何でそれが治ったのか、何が原因で起きたのか分からないのだ。

映像が入らない、音だけのところは、音だけのファイルでよかろうと思ってたのだけど、音だけのファイルをDVDに入れるということはできないらしくて、結局ぜんぶ映像ファイルにした。
とりあえず画面クリップを入れないと映像ファイルにならなくて、でもうしろで音クリップがはみ出るのはいいらしい。
そこで、ほんとに音だけのファイルは最初の1秒くらいカラーパレットの黒をクリップで入れて。
ファイルのうしろのほうで画像が出てくるという場合はそこまでの音だけの部分、真っ黒い画面をえんえん入れて作成。
音源編集でいうとサイレンスを入れるべきところに、映像編集では黒画面クリップを入れてる感じね。
映像ファイルにするとムダにサイズがでかくなる。

ブラックイン/アウトするにはどうしたらいいのかという研究も。
直接そういう機能はなくて、トランジションのクロスフェードを応用して、黒画面クリップと使う画像クリップとでクロスフェードさせてつくる。

そんなふうにして、もともと7つの音ファイルから成ってた音源に画像を加え、7つのプロジェクトファイルを作成。
で、これをじっさいどうやってスクリーンに映すかという方法論。
さいしょいつものようにwmvに、今回はハイビジョンのサイズでレンダーしてみた。
ところが、できない。
何度やっても、「失敗しました、すいません」みたいな表示が出て、ビデオスタジオ自体が閉じてしまう。
そこで、現場に行ってホールの担当の人に相談した。
そしたら、DVDにまとめて、DVDプレイヤをプロジェクタにつなげてやるのがいちばんよかろうという結論に。

それまでは基本、プロジェクトファイルからwmvにしてたんだけど、自分のパソコンでwmpで再生しようとしても、なぜだか画面が固まってしまって、再生できないのだ。
デスクトップにいろいろアイコン出し過ぎというのもあるらしいけど。
いずれにせよ、パソコンはなにかとunreliableすぎるので本番には使いません。
それにしても、形式はwmvでいいのかしら・・・以前にwmvでDVDをつくったら、気の遠くなるほど時間かかった記憶があるのだけど。
そう相談したら、ソフトで<DVD作成>メニューを開いて、出てくる形式でやってみたら? と。
それがNTSC? とかなんかそんな名前の形式で。結局mpegになる。
うち帰ってやってみたら、wmvにするより、レンダリングにはるかに時間がかからなかった。
今までの苦労はなんだったんだ? という感じでちょっと拍子抜け。

ところが、それからじっさいDVDにするまでが大変なことになった。
ビデオスタジオvol3でDVDをつくろうとすると<ビデオライター2010>というのが立ち上がるのだが、これがムジナのように正体不明で、さっぱり分からん。
あちこちクリックしてみても、ダブルクリックしてみても、全く何も開かん。歯が立たん。

困って人に訊いてみると、・・・あー、あれはみんな苦労するんですよ。と。
12だと分かりやすかったんだけど。4になるとまたそれに戻ったんだけどね。
・・・んなこと言われても。

12が入っていたので開けてみたら、体験版でもう使えなかった。あんまり覚えないんだけど。
結局、4の体験版をダウンロードして使うことに。
それが何だかんだといろいろごちゃごちゃあって、600MBもある。
で、何だかんだと時間がかかる。
もういいよーと思っても、次から次へと色々実行したり構成したりいつまでもやってる。
あげくの果ては、体験版なのに個人情報を書かされた。
で、すでにアカウントをお持ちです。パスワードを入れてください。
・・・んなの覚えていません。
ではこちらのURLからリセットしてください。

DVD1枚つくるのに、えーっ?! ほんとにここまでめんどくさいんですか。
なんかヒマラヤの山ひとつ超えるほうが楽そうな気がしてきた。

やっとインストールが終わってやってみると、たしかにこれなら分かりやすい。
30分のコンテンツ、DVDに焼くのに10分くらい。時間もリーズナブルだ。
けど、焼き終えたあと「プロジェクトを保存しています」というのの、水色のタスクバーがえんえん出て、いつまでも閉じることも、パソコンを終了することすらできず、やっかい至極。
あげく、保存されたプロジェクトファイルというのをあとで見てみたら、コンテンツのさいしょの1秒くらいが入っただけの、何の意味もないファイルだった。
・・・何だこりゃ。

できあがったDVDを見てみる。
<メニューを作成>というところのチェックを外しておかなかったら、勝手にできあいの目次ページができていて、なんかジャズの音楽まで入ってる。
メニューってそういうことだったのか! じゃあ、あっちゃだめだ。
で、次に焼いたバージョンからはメニューを外した。
そしたら、それはそれで問題が。
7ファイルの各区切れ目を、チャプターとして認識してくれないらしくて、頭出しできないのだ。
途中に行きたい場合は、いちいちさいしょから、ファイル1のさいごまで32倍速で再生して、そのあとファイル2にいくとまた元の早さに戻るから、また32倍速にして・・・というふうにしないといけない。
それに加えて、さいしょとさいごで止まっていてくれなくて、再生するといきなり始まってしまうし、さいごまで行くと自動的にさいしょに戻ってまた始まってしまう。

この現象は、ホールのDVDプレイヤでも変わらなかった。
そこで、さいしょは、再生して次の瞬間に一時停止した状態にしておいて始め、さいごは岡田さんに頼んでおいて、おわったタイミングでまた一時停止してもらうことに。

ほかにも、さいしょなぜか画像がモノクロで出たり、ファイル1がリピートされてしまったり、原因不明のやっかいな現象が。
でも、いちばんあっちゃーと思ったのは。
一時停止して5分すると<パイオニア>という文字が出てしまうので、みんなで注意して5分たつ前にまた一時停止し直していたはずなんだけど、あとで本番の舞台の映像を見たらしっかりスクリーンに<パイオニア>の文字が。
あれは何でだったんかなー。いまだにナゾだ。

逆に思いがけないいいこともあって、それは、映像が出るところと出ないところの切り替えをやらなくてすんだこと。
映像が出ないところでは、人が舞台に立つとプロジェクタの光を浴びてしまうから、タイミングをはかってリモコンでミュートしたりまた復活させたり、をしなくてはいけないと思って、踊りながらリモコン操作する練習とかしてた。
けれど、映像が出ないところの黒画面では光があまり出ないし、リモコンでミュートしてもそれが反映されるのに10秒くらいかかって、しかも目で見て分かりにくいのだ。
そのことがリハのときはじめて分かって、かなり慌てた。
で、これはちょっと危ないなと思って、もういっさいミュートなしで行くことにした。
おかげですいぶん手間が省けて、しかも危ない橋を渡らずにすんだ。
ほんとにこういうもろもろのことって、現場に立ってみないと分からない。

とにかくよく分かったのは、こういう機器を使うとぐっと可能性が広がる半面、実にバラエティ豊かなさまざまなごたごたが持ち上がるもんだということ。
それを覚悟のうえで使わないと。

絵を映像として、スライドショー形式で見せるのは全然ありだと思う。
こういうかたちの一種の個展というふうに考えてもいい。
前にテレビで、ジョン・エヴァレット・ミレーの<オフィーリア>をじっくりズームして見せてくれたことがあって、感動した。

でも、今回のコロフィンは写真を撮ってなかったから絵になっただけで、もともとがほんとに美しいところだから写真があれば写真でも全然OK。
それより、できれば現地で映像を撮って使いたい。
というのは、アイルランドのとくに空は、その動きに、流動性に魂がある。
瞬間を切り取るより、あのダイナミックな雲の動きを、虹のきらめきをそのままスクリーンに流したい。

あと、今後の課題として、湖底の緑色のシーンでは、色だけじゃなくて水のゆらゆら揺れる感じや、泡や水草の感じを表現したい。
晴れた日にプールの表面に反射して見えるような、揺れ動く光の模様を。
それは、映像で表現したほうがいいのか、それとも照明で表現したほうがいいのか、そこは研究してかなきゃ。

ただね、映像に重きをおくほど、ライヴの要素、生の演技の比重が少なくなって、これは課題。
両方の要素が自然に調和して、豊かに増幅するような舞台をつくりたいんだけどね。
(つづく)

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